最後の彼岸花 | 続・阿蘇の国のアリス
「ここは?」






「臼杵の大日如来さまだ」


大分県佐伯市から帰った私たちは、
翌日、竹田市に向かいました。


「旅をする犬なの」


※カフェスロービート


覚えているかな。

ぼくは七年間とすこし、
きみをじっと見ていた。


アリス、きみは雨のなかを
ずぶ濡れで走った。


空に一番近い場所を笑いながら歩いた。


ぼくにだって、今はわかる。


きみはなにをしているときでも、
必死で自分自身でいようと
しただけなんだ。


きみは真実を知っていた。


命は火のついた導火線で、
ためらっている余裕など
本来誰にもないはずなんだ。


※七ツ森古墳群へ




「アリス、わかるかい?
七ツ森古墳の彼岸花...。
小さい頃、よく遊んだでしょう」


「わからないか...」


9月の台地に踊る赤い光。

私はちゃんとわかっていた。


ただ、
誰にも邪魔されたくない幸せが
そこにあったのです。

何があってもこの胸から
離れないでいよう。

儚くやわらかな温もりを感じながら、
私は垂れ下がった足に力をこめました。