にせモンと一緒に、
9月の小国町を旅していた。

かつて水泳犬だったアリスちゃんは、
ここ「遊水峡」にも精通しており、
ヤマメを追う旅をともにしてくれた。

「アリスちゃんが見たヤマメに
ぼくも出合えるかな」

川虫に満ちた小国の夏の川。


「捕まえて
アリスちゃんにプレゼントするんだ」

「さあ、行こう!」

「ヤマメはどこ」

「ここかな」

「チッ、いないや」

「とうさん、もっと奥に行こう!」


誰もがつかの間の出会いを
いつくしんでいるように思われた。

「魚止めの滝なら
きっとヤマメがいるにちがいない」


「かあさん、何かいる!?」

「にせモンさんよ」

結局、その日、
ヤマメを見ることはなかった。

ミス音大のかあさんのビキニも
見ることはなかった。

「アリスちゃん、ごめんね」

「いいよ、今度捕まえて」

かあさんのビキニが
見れなかったにせモンは、
その夜、やけ食いに走った。

※杖立温泉

※こまつ食堂






今年の
にせモンとぼくの夏が終わった。
