ほんものの英雄 | 続・阿蘇の国のアリス
アリスちゃんは、
ぼく(ジュジュ)にとって
ほんものの英雄だ。

5歳になったばかりだけれど、
アリスちゃんが掛値なしの
英雄であることくらい、
誰に教わらなくてもわかっている。


この夏、
アリスちゃんと過ごした10日間は、
ぼくたちにとって
かけがえのないものとなった。


一日目。

幸せを呼ぶ青い蜂は
見つからなかったけれど...


楽しみは残った。


「別荘を見つけてくれてありがとう」

その夜、かあさんは手料理で
アリスファミリーをもてなした。


二日目。

南阿蘇の仲間たちと
地元のビアガーデンに行った。


「ようこそ、南阿蘇へ!」


子どもたちがみんな集まってきた。
ゴールデンが珍しいのだろう。

目前の阿蘇山は夕陽を浴びていた。


三日目。

宮崎の美しい村の激流を泳いだ。


夢のような時間だった。


四日目。

にせモンが切株を掘り起こしてくれた。


「にせモンは本当はクマじゃないの?」


五日目。

とうさんとかあさんは
峠を越えて整体に行った。


夜は門前町商店街の
イタリアンへ。


六日目。

アリスちゃんの闘病一年をみんなで祝った。


アリスちゃんには菓樹のケーキを。


七日目。

にせモンが草刈りをしてくれた。


彼はいつでも飛んできてくれた。


八日目。

高森町では、夏の風物詩・風鎮祭。

夏休みも終わりに近づいた。


九日目。

阿蘇の穴場を満喫した。


ある日、
一条の足跡がついているのを
見つけました。

一体何の足跡だろうと思って
近づいてみると、
それはあか牛でした。

ここが、
アリスちゃんの物語の
始まりの場所。


「弱ったアリスちゃんに、手を出すな!」


「チュッ♪」


アリスちゃんが
もっている物語は、
そのへんの映画や、
芝居よりも
ずっと実のあるリアルな
ライフストーリーなんだ。


その現場に立っているだけで、
ぼくの胸は躍っている。








ぼくも、かあさんも、豆乳初飲み。




ホットドッグは
かあさんの一番の大好物だ。


「アリスちゃんはいつも私に
元気をくれる...」

ヒバリカフェのママさんは、
アリスちゃんをなでながら、
ずっと泣いていた。






最終日。

お別れの時が来た。


末期の脳腫瘍のせいで、
アリスちゃんの体力は
ひどく落ちこんでいた。

ぼくの胸が熱くなった。

ぼくたちが自由にできるのは、
どう死ぬかではなく、
どう生きるかだけなんだ。


「アリスちゃん、また会おうね。約束だよ」


そして、今日のアリスちゃん...。


一週間ぶりの病院に行ったそうだ。




夜になってふたたび
立ち上がろうとしているらしい。

アリスちゃんはやっぱり、
ぼくにとってほんものの英雄だ。