旅は終わらない | 続・阿蘇の国のアリス
深夜になって
私の呼吸がみだれたせいか、
パパは心配して
私の隣に添い寝しました。

「ハァ、ハア、ゼェ、ゼエ...、
パパ、苦しいよ...」

浅くて早い呼吸音でした。

「さすってあげるね」


翌日は、
ノラクロのいる芦北町で
会議があるというのに...

「ごめんね、パパ。眠れなかったね」


会議には、私も参加しました。

「無事に帰って来てね、コッ、コッ」


みんなに会えて嬉しかったです...

「怪物く~ん♪」


これが最後に、なるかもしれないから。


会議が終わると、
私は急いでペットクリニックに
連れて行かれました。




「先生、私、もうダメかも...」


「ダメなんかじゃないよ。
体重も変わってないし、
パパとママがついてる...」


「それにね、ぼくは5年間で
400以上のMRIを診てきたんだけど。

延髄にできた脳腫瘍で、
10ヵ月以上も生きている
ワンちゃんと出逢ったのは、
アリスちゃんが初めてなんだよ。

つまり、10ヵ月以上の
生存率は0パーセントなんだ。
アリスちゃんはもう、
神の域を生きてるんだよ」

先生がいうには、
大脳、小脳の脳腫瘍で、長くて1年。

延髄になると3ヵ月だそうです。


「だから、アリスちゃん。
アリスちゃんはぼくたちの希望なんだよ」


「キリッ!」

私は笑いたかった。

吠えるように泣きたかった。

よく出来た脚本だとほめてやりたかった。


昨日は長い夜でした。

ここが最後だと思っていましたが、
この場所でも私の旅は終わりませんでした。


「ねえママ、私、いい子?」