犬の匂い | 続・阿蘇の国のアリス
ぼくたちは深く愛し合っています。

強く抱きしめたとき、
その体から立ち昇ってくる
彼女の匂いは、
ぼくを陶然とさせるものでした。

彼女のほうもまたそうであったはずです。

彼女の名はアリス、
ゴールデンレトリバーです。

犬というのは、
どうしてこんなにも
いい匂いがするものでしょう。

ぼくは犬の匂いが大好きです。

どこを向いても暗い話ばかりで、
子供心にあんたんとした気分のときも、
ぼくは、近所の犬小屋に泊まり、
犬を抱きしめて眠っていました。

朝、主人がエサをやりにくると、
ぼくがひょっこり、
犬小屋から顔を出すものだから、
何度も腰を抜かしていました。

父からは
「まるで、ムツゴロウみたいだ...」
と言われていました。

その、ムツゴロウさんですが、
ぼくの父は、
幼い頃の彼を知っていて、
やはり彼も、犬小屋に泊まり、
犬と一緒にどんぶりのご飯を
食べていたそうです。

野球を一緒にやった時。
ヒットを打って、
1塁ではなく、3塁に走った。
とも、言っていました。

あっ、話しがそれてしまいましたね。

とにかく、
ぼくにとっての犬の匂いは、
何かこう懐かしく暖かく、
深く安心するような匂いです。