美しき愚かものたちのタブロー
原田マハ著
文春文庫
2025.6.11読了
☆☆☆☆
第一次世界大戦の前後、若い芸術家のために美術館を造ることを夢見て英仏でタブロー(絵画)を買い集めた男と、第二次大戦後それらの日本への返還に奮闘した人たちの物語。タブローを買い集めたのは川崎造船の初代社長松方幸次郎で、その他の登場人物も主人公を除いてほぼ実名で登場している。なので主な出来事は史実にかなり忠実なのだろうが、その隙間を感動的に埋めていくのが著者の巧いところ。特に終盤の回想の場面はあっぱれです。
極東の新興国のお金持ちが、歴史あるヨーロッパで名画の数々を購入できたというのも驚きだが、そこからの紆余曲折はまさに事実は小説よリ奇なり(小説なんだが・笑)。国立西洋美術館も、こういう生い立ちを知って鑑賞すると、よりいっそう想いが深まると思う。ただ小説を鵜呑みにすると、学芸員の方には怒られるかもね(笑)。