・副交感神経と交感神経の両方が高い状態が健康については理想であること。両者のバランスがが1対1が理想。このバランスを大きく欠くと、体の機能が低下する。
・特に副交感神経の活動が低いと、免疫力が低下したり、消化などの機能が低下する。
・更年期障害も自律神経の乱れが原因
・スポーツでも、副交感神経が低い状態だと、あせりからミスが生じやすくなること。逆に、副交感神経が高いと「余裕」が生まれ、自分のパフォーマンスを発揮できること。
・現代の日本では交感神経が高めで、副交感神経が低い状態の人が多い。副交感神経を高い状態で保つことが、健康につながり、能力を最大限に発揮できるように導く。
そして、本の帯には「ゆっくり生きると、病気は逃げる。」と書かれている。この「ゆっくり」というのが小林教授のススメで、副交感神経の活動を高めるコツだとしている。例えば、生活や仕事に余裕を持つことなどがこの具体的な方法だ。
この「ゆっくり」について、私としては「余計な筋緊張をやめている状態」というものが、副交感神経を高い状態にするコツだと思っているんです。そして「ゆっくり」というのはその一つの状態だと。
以前より、アレクサンダー・テクニークはこの自律神経のバランスを整えるもの、より具体的には副交感神経の活動を高めるものという認識は持っていた。アレクサンダー・テクニーク教師で、認知科学を研究されているレイチェル・ザーン女史が、アレクサンダー・テクニークは副交感神経活動を高める可能性があると指摘していたからだ。
私自身もそれまで頭痛の症状を持っていたのだが、このテクニークを学びはじめてから、この頭痛の症状がかなり緩和した。そしてこの小林教授も頭痛が緩和されたという。頭痛は自律神経の状態が原因の一つだと。頭痛が減ったと同時に、日常生活の動きや行為の中で自分自身に気づきを持ち、過剰な緊張が起こらずにそれを行っていると、その行為自体もやりやすかったり、ラクになったりするのと同時に、心の落ち着き感も感じていた。夜もぐっすり眠れるようになったり、尿の回数も減ったりと、心や体の質的な部分を含めた自分の健康状態が全体的によくなった。
振り返ってみると、体全体への影響がある自律神経のバランスがよりよい状態になったからなのだろうと思う。身をもって実感したことなので、小林教授のいうことはとてもよくわかる。
私はこの間やってきたことは、「体の余計な筋緊張をやめる」ことだ。「ゆっくり」しようとは思ってきませんでした。ただ、結果的にはそうなった部分も沢山あると思う。そして、より具体的には、
・自分に気づき、思考と共に自分の体を扱う。
・腹部や頸部、背部の余計な筋緊張が起こりづらい状態で、姿勢を維持したり、活動する
をしてきました。こうやって書くと「ゆっくり」以上に大変そうな感じがしますが、感覚がわかってくるとそんなことはありません。
あくまでも仮説ですが、筋緊張(収縮)が強い状態だったり、またはそれが継続する状態があると、副交感神経のレベルが高まらないのではないかと。自律神経は心の状態で機能が変わるというのもあると思うが、実際の筋肉の収縮状態でその活動レベルを変化させているのではないかということです。
このため、日常生活で筋緊張が多い状態の人は交感神経が高く、副交感神経が低くなりやすい。もちろんストレスをはじめとした心の緊張も関係しているかもしれない。ただし、体の筋緊張に気づいていないと、こうした心の緊張が体に現れていることに気づかない。心の緊張があっても、体の緊張として表さない選択はできるんです。
「ゆっくり」するのは落ち着くにはとてもいい。しかし、ときとして仕事や活動では急ぐ必要もあるだろう。力やスピードが求められることは音楽家やアスリートなどのパフォーマンスを求められる人だけでなく、通常の生活や仕事でもあります。そのときに「ゆっくり」だけでは実現しづらいと思います。
小林教授も、この著書の中で名医をいわれていた先輩医師から外科手術の際に「ゆっくり早くやるように」と言われたそうです。この言葉は矛盾しています。教授自身もそう指摘しているが、教授は「ゆっくり」を意識することで、この言葉の意味するところが経験的に理解できたように書かれている。
「ゆっくり早く」はその矛盾がともすると東洋的な奥義のように響き、「修行を経ないとわからないものだ」的な感じになってしまう。矛盾していることは事実であり、一般的にはやはりこのままだと実現しづらいことだ。
私はこの言葉は「余計な筋緊張を入れずに急いでおこなう」ということだと解釈します。そして、これなら実現しやすい。体に具体的な指示ができるからです。
「ゆっくり」すれば、余計な緊張が入りづらい状態になりやすい。しかし、手術のようにスピードが求められるときがあり、そのときに単に「ゆっくり」という指示ではそれが実現できません。本来やらなければならないことを、自分の体に気づき、そして明確な思考と共に動く。これで名医のいう「ゆっくり早く」の感覚に近い状態にいけるのではないかと。勝手な解釈ですが、ぜひ一つの参考にしてみてください。