腰痛対策にアレクサンダー・テクニーク | カラダのココロ

カラダのココロ

アレクサンダー・テクニーク教師の青木紀和のブログ。
よりよく自分自身を使いこなすヒントやアイデアに関する情報を綴ります。

関東労災病院の松平浩先生が、腰痛対策に関する小冊子をまとめられました。その中でアレクサンダー・テクニークの有効性が記載されているんです。


「腰痛の実態と新たな視点に立った職域での腰痛対策」 松平 浩 編著、独立行政法人 労働者健康福祉機構
表紙はこちら
カラダのココロ


この小冊子の中で、「脊椎のdysfunction(機能障害)を起こさない日頃の意識:B-position」という項で、「アレクサンダーテクニークの上級者は、B-positionを習得している」と。

そのページがこちらです。

カラダのココロ


ここでいうB-positionとは、「脊椎に負荷のない静的姿勢や身のこなし方」のことであり、Beautiful body balance positionの略です。

いいネーミングです。

以下、この項の引用です。

体型や身のこなしは人によって千差万別です。個々にとって脊椎に負荷のない静的姿勢や身のこなし方(B-position)を脳と身体に問いかけ身につければ、脊椎の機能障害、いい換えれば”軽いderangement”を起こしにくくなるでしょう。気持ちが前向きになり脳のdysfunctionにも好影響を与えるかもしれません。

B-positionの習得を目指す際、腰椎のアライメントに限ってみれば個々にとって最も自然な前弯位を探求することになりますが、腰椎のアライメントだけにとらわれない頭部も含めた全身的な位置感覚の意識付けが必要です。慢性/再発性腰痛管理として無作為比較試験で有効性が示されているアレクサンダーテクニーク(習慣化された体の不必要な緊張に気づき、それをやめることを学ぶ方法)やヨガの上級者は、B-positionを習得していると思われます。



松平先生は、腰痛の分野での第一人者であり、多くの研究結果を発表されています。多くの調査研究や情報を厳選して簡潔にまとめたものがこの小冊子です。近年はエビデンスベイスドメディシン(EBM:科学的根拠に基づいた医療)という言葉が注目を集めていますが、アレクサンダーテクニークによる腰痛の緩和については、英国医学雑誌のBMJに論文が掲載され、その効果が客観的に検証されているんです。エビデンスに基づいたものとして、松平先生はアレクサンダーテクニークを採り上げているのです。


小冊子の「はじめに」の部分より。現在の腰痛事情が簡潔にまとめられており、どのような方向性に来ているかが示されています。とてもわかりやすかったので、引用します。



”私が医師になって20年が経ちました。腰痛と向き合いはじめて15年になります。初期の頃は、「薬物治療とブロック治療を駆使し、それでも良くならなかったら手術で制圧する」という理念で腰痛患者と向き合いました。診断の拠り所は画像所見です。恐らく、現在も一般的な診断と治療のスタンスでしょう。坐骨神経痛を代表とする神経症状がメインの腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊椎管狭窄症に対しては、この一般的スタイルが妥当な場合が多いことは間違いありません。しかし、腰痛の多くを占める「いわゆる腰痛症」には、このスタイルではあまりうまくいかないことに気づき、壁に当たり、もがき苦しんでまいりました

「いわゆる腰痛症」は、現在の分類では「非特異的腰痛」と呼ばれています。従来の診断名としては、外傷機転や単なる画像所見としての病名、個々の医師の印象、保険病名といったことから腰椎捻挫(いわゆる”ぎっくり腰”)、変形性腰椎症、腰椎すべり症、腰椎椎間板症、腰椎椎間関節症、筋筋膜性腰痛と呼ばれているものが非特異的腰痛に含まれます。”非特異的”とは、わかりやすく言えば”よくわからない”という意味です。病因を突き詰めることができないまま、診断や予防対策を確率できるはずがありません。今もやむなく続いている「器質的・形態学的異常」という視点を重視した腰痛に対する医療スタイルには明らかに限界があり、これにこだわっている限りは残念ながらブレイクスルーはないと識者は気づいています。

最近、筆者は「非特異的腰痛の多くは、脊椎(運動器)と脳、両者のdysfunctionの共存である」という考えに達しました。「脊椎の形態学的異常」ではなく「脊椎と脳の機能異常(障害)」という新たな視点です。この視点で患者さんに向き合うようになってから、治療も予防も一気にうまくいくようになりだした感触を得ています。

この「形態学的異常」から「機能異常」へのコンセプトの変換を強く意識できたのは、腰痛・脊椎関連分野のオピニオンリーダーの中のオピニオンリーダーであり、私が最も尊敬する福島県立医科大学長 菊地臣一先生のご講演や著書のおかげです。頭痛の診断・治療体系が、”機能性頭痛”という概念が確立されてからブレイクスルーを見たのは、私にとって印象的であり羨ましくもありました。しかし、その概念の確立に関し頭痛よりもハードルが一層高いであろう腰痛でも、わずかながらも光明が差しつつある気がしております。

本書では、非特異的腰痛の謎に挑んできた近年の研究結果を世界標準のエビデンスも踏まえ紹介しつつ、新たなコンセプトと職域における対策法(私案)について僭越ながら概説させていただきます。 

(独)労働者健康福祉機構 松平 浩」


年内には、この小冊子がブラッシュアップされて販売物として発刊される予定があるそうです。一応、小生も共同研究者および研究協力者として加えさせてもらっているので、今後とも微力ながら松平先生へこのレッスンの効果を伝えていこうと思っています。

このアレクサンダー・テクニークのアイデアをベースにして、私は効果的な身体の使い方を日々指導してており、成果を挙げています。この間もブログでもお知らせしましたが、腰痛の方が解消にまで至ったと示しました。
「腰痛が解消した」体験談

腰痛で悩まれている方には、力になれると思いますので、ぜひ一度体験レッスンにいらしてください。