あろうことにこの人は
僕らに謝罪するどころか、
駄々っ子をたしなめるようにこういった。
「子供の前でやめませんか?」
僕の心のなかの猛獣が
理性の鎖を引きちぎりそになった。
少なくとも、
それをいう権利があるのは加害者ではない。
この人はきっとこれまでも、
相手の善意や品位、配慮や思いやりを
逆手にとって生きてきたに違いない。
とはいえ、
公衆の面前でおじさんが声を荒げ
怒りをぶちまけるのは
確かにとてもみっともない。
それに、
この一件が下手にこじれて尾を引けば、
娘の学校生活に支障をきたす恐れがあるし、
彼女自身、
親同士の言い争いなど望んでいないのだ。
結局、
「忍の一字」を選んだ僕は、
家に帰っても怒りが収まらず、
グループLINEで保護者全員に
恨みをぶつけようと思ったがやめた。
いま事を荒立てたところで
状況が好転するはずもなく、
また、
娘の心の傷が癒えるわけでもないからだ。
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退職の経緯などをまとめた
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