⑥ややこしい駐車場の警備員vsこわもてカップル
結局こわもてカップルは僕らの失礼な予想を裏切って、衣料店とは反対の方向に曲がり、図書館へ向かった。ダッシュの目的を失ったおじいさんは、駆け込み乗車に失敗した人のごとく、平生(へいぜい)をよそおい、くるりと踵(きびす)を返した。そして、悪びれるようすもなく、元いた警備の立ち位置に戻り、(一部始終をガン見していた)僕に向かって、かっこよく片手を上げた。「心配かけたな」なのか、「やってやったぜ」なのか、上げた右手に込められた意味は分からない。僕はいろいろと複雑な気持ちになり、逃げるように妻の背中を追うのであった。ややこしい駐車場の警備員vsこわもてカップル(完)\検索不要で更新記事がすぐ読めます/退職の経緯などをまとめた連載の第一話はこちら⇒第一話(全28話)