夫婦で丁寧に謝罪し、

車を移動させたものの

駐車場は図書館、衣料店ともに
十分に空きがあった。

わざわざ走って追いかけてきて、
移動を迫るほどの感じでもない。

 

 

 

このおじいさん、
ある見方をすれば
「融通の利かない人」に映るかもしれないが、
きっと仕事熱心でまじめな人だ。

こういう人たちが
社畜ならぬ企業戦士として懸命に働き、
いまの時代の礎(いしずえ)を
築いてくれたに違いない。


 

いや、
むしろ若いころは「事なかれ主義」を嫌い、
損得よりも道義を重んじるような
勇ましい人だったのではないか。


 

そんな妄想にふけりながら
おじいさんのいるフェンスの向こうに目をやると、
黒塗りのいかつい車が猛スピードで
駐車場に突っ込んでくるのが見えた。


 

そこで僕は

ふと思ってしまったのだ。



 

あのおじいさんは
怖そうな人でも
同じ対応をするのだろうか――。

 

 

 


僕がそんな余計なことを

考えてしまったせいで、
このあとおじいさんは、
窮地に立たされることになる

 

 

 

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