大好きなカービィのケーキを前に、
突然息子が泣き出した理由――。

このとき僕は、
会社を辞めて貧乏になった負い目から、
ネガティブな思考に支配され、

息子の涙のわけがわからずにいた。

 

 

「誕生日プレゼントが

Nintendo Switchではないから

泣いているのか」

それとも、

「スーパーのシュークリームをあてがわれた姉に

カービィのケーキを半分とられないか

心配なのか」

 

 

 

たじろぐ僕を尻目に、
何かに気づいた妻が目を細め

息子に尋ねた。

 

 

 

 

「ひょっとして、うれしいの?」

 

 

 


息子はこくりとうなずき、
涙ながらにこう訴えた。

 

 



「この家に生まれてよかった」

 

 

 



ようするに息子は、
誕生日に夢が叶い、

感極まって泣いていたのだ。


僕は
しあわせな気持ちと申し訳なさで
胸がいっぱいになった。

 

 

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