思い起こせば、
僕がはじめて母の落ち込む姿をみたのも、
普段は温厚な祖父が大切にしていたものを
誤って捨てた日のことだった。
たしか「柏原芳恵さんの
サイン色紙」か何かだった。
怒るおじいさんを子ども心に
「大人げない」と思ったのだが、
いまはほんの少し、
気持ちが分からなくもない。
ひるがえって、
義父の怒りのレベルは
「サインうんぬん」どころではない。
「神秘体験したから会社を辞める」などと
言い出す娘の旦那に、
怒り狂うのは当然だ。
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