人生にはなにゆえ苦しみが満ちているのだろう?そんなときは遠藤周作『沈黙』に沈潜してみては? | チャンクロブックスー教養人への冒険

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遠藤周作『沈黙』新潮文庫。

おすすめ度5
難易度2 あくまで読みやすね

マーティン・スコッセシ監督によって映画化もされた作品。

 


キリスト教が弾圧されていた江戸時代の日本にイエズス会の神父(ロドリゴ)が自分の師が棄教したという噂を聞き、実際どうなっているのかを確かめたくも思い、海を越え、信仰を伝えようとする。が、ロドリゴがそこで見た現実はキリスト教徒にとって酷いものであった。その酷い現実に沈黙する神にロドリゴは葛藤する。

というのが大まかな物語のあらすじ。

信仰の問題に悩んだことがあるなら、ロドリゴのようにこの世の不条理に神が沈黙することへに苦しむは痛く共感できるかと。

にしても、この小説の結論は中々宗教的に危険性があるように思えた。

詳しくは本文を読んでほしいけど、

信仰を極めたところに、信仰と逆の行為が出てくるとは大変矛盾した「真理」ないし「愛」があるし、その実践は「弱さ」ゆえに意味があるとは中々刺激的な結論だ。

 

*ネタバレ防止のためあえて抽象的に書いてます。

 

遠藤周作のなかでの信仰の問題、特に裏切り者のユダに対する問題への葛藤が現れているのだと思った。

 

ユダと言えば、イエスの弟子でありながら、イエスをローマ側に売り渡し、銀を受け取った裏切り者。ユダの裏切りによってイエスは処刑されることになる。

 

けど、神が絶対ならユダのような弱い存在は何故に存在するのかはすごく問題。また、そのような弱き存在であるユダの裏切りによってイエスは何故に死ぬのかも神学的には難題である。

 

どうも遠藤は「弱い」存在の「救い」への道を模索しようと葛藤しているように思える。

 

これは遠藤周作の生い立ちとかも考慮すると見えてくるものがあるかもしれない。

 

遠藤周作は今でこそ一流小説家として認識されているが、彼は最初から才能に恵まれていた人かというとそうではない。

 

彼は若い頃は受験に失敗しまくっている。この頃の大小説家は東大文学部出身のバリバリインテリだから、何かしらのコンプレックスもあり、作品世界に影響を与えていると推測される。

 

それはさておき、人生に苦しみ、自分の「弱さ」に自覚した人には、遠藤の作品は心に響くものがあるかと思います!

 

ぜひ一度『沈黙』の世界に浸ってみてください!

 

*遠藤周作の『海と毒薬』、『深い河』もおすすめ!

 

 

宇多田ヒカルに影響も与えています。

 

*エッセーのほうはぐうたらしております。

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