『ブレードランナー』といえば、フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るのか』を原作とした1982年公開のSF映画の金字塔。後の作品に与えた影響も半端ないです!
*映画『攻殻機動隊』の世界観はまさにブレランです。
ハリウッド版のは映像はカッコいいですね。
さて、今回のブログでは、そんなSF大作『ブレードランナー』について語ろうと思います( ・∀・)
そもそも『ブレードランナー』を観たことない人もいると思うのでストーリーを確認しましょう!
人造人間であるレプリカントは地球外植民地で労働力として使われていた。だが、それに対し5体のレプリカントが抵抗すべく地球に降り立った。レプリカント狩りで賞金を稼いでいたハリソンフォード演じる主人公デッカードは5体のレプリカントを始末しようと動きだす。だが、その過程でレプリカントであるレイチェルと親しくなり、何が人間なのだろうかと考えていく
ざっとこんなのが大まかなストーリー。
そんな凄まじい『ブレードランナー』ですが、舞台が2019年11月なんです!
*オープニングシーンのカッコよさがたまらないです。
そう、映画公開時1982年に想定されていた未来にもう追いつっちゃんたんです( ゚Д゚)
いやー、予想された未来とはいろいろ違ったんですけど、公開から40年近く愛されている作品のうんちくはこの機会に語りたくてしょうがありません( `д´)
何はともあれ『ブレードランナー』ごたごたが多い、多い。
劇場公開時に酷評でその後いろいろ手を加えたもんだから、13もバージョンがあるという代物。どういうこっちゃ😓
*公開時バージョンのラスト
不評につき、後のバージョンではカットされました。
こうなるのも仕方ない面はあるんですな。
この映画を何も知らない人が見たら、この映画何がしたいんってなると思うんですよね。
監督のリドリー・スコットは映像美は凄まじいんだけど、映像美を際立たせるために、余計な説明を省くもんだから、初見だとストーリーに追いつくのがやっとということになりかねないんですな。
*リドリー・スコット wikiより
そのため、映画が伝えたいテーマや映像美を生み出した工夫とかを見逃しかねないんですよね。
情報量めっちゃ多い映画だから、何度も観て、ようやくじわじわ面白さが分かるという代物。
こんな作品だから、公開時は不評で、何年かたって爆発的に人気になるんですな😃
さてさて、それはともかくどんなごたごたがこの映画にはあったか紹介していきましょう!
1:原作にまつわるごたごた
フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るのか』が原作なのですが、原作をいろいろ変えたことで、ディックは怒っていたそうな。
そもそも原作では人造人間はアンドロイドなのに、映画ではレプリカントに変わっているんですな。これ重大な設定変更ですやん。
しかもアンドロイドに魂はないのに、レプリカントには魂があるという作品の根本にかかわるところで監督と原作者が考えが違うって、そりゃ作者怒ります。
まあ、ディックは映画の試作を観て、素晴らしい作品を作ってくれたと思い、仲直りしていきます。けど、ディックは完成品を観ることなく亡くなってしまいました。実際に観ていたらどう評価したのか気になるので残念な限りです。
さて、他にも原作からの変更はありますよ!
大事なことですが、原作では人造人間狩りをブレードランナーと言ってないんですね。
原作では主人公は懸賞金を稼ぐバウンティハンターでした。
*ちなみにブレードランナーとは、Blade手術用メス +Runner密売人という意味だそうです。
タイトルの『ブレードランナー』に決まるまでもごたごたがあり、『デンジャラスデイズ』であったり、『ゴッサムシティ』にしようとしたそうです。
ゴッサムシティはバットマンサイドにお断りされたそうです。
また、原作では核戦争後の空っぽのサンフランシスコが舞台で動物がほとんど滅びていて、人工動物を代わりに飼っている世界です。リアルな動物は高価で、飼っているだけでステータスになります。そんな時代に妻のいる主人公は電気羊でなく、リアルな羊を飼いたいと願っています。
けど、映画では動物はあまり前面にはでず、妻も切り捨てハードボイルド探偵ものをロサンゼルスで展開しています。
2脚本のごたごた
原作を変更したことで、作者といろいろもめたのは紹介しましたが、原作を映画化する際にもエピソードに溢れています。
『ブレードランナー』の脚本を書いたハンプトン・ファンチャーは原作の映画化権を手に入れて、ディックに会いにいったとき、女性を二人連れて行ったそうです。
どうもディックは一人の女性に後にラブレターを送ったとか、そうでないとか。いろんな噂があります。( ̄^ ̄)
*ハンプトン・ファンチャー wikiより
元々は俳優だった人です。
元妻はキューブリック監督『ロリータ』に出演したスー・リオンです。スー・リオンは中々破天荒な人生を歩みました。その元凶はキューブリックにあったそうな😓
あと、最初脚本を書いていたハンプトン・ファンチャーですが、後に別の人が脚本を手を加え、彼はお払い箱になっております。
3出演者たちのごたごた
ここから出演者たちのごたごたを見ていきましょう!中心となる3人の出演者にスポットを当てたいと思います!
まずは主人公デッカードを演じたハリソン・フォード
スターウォーズ、インディージョーンズで有名な俳優さんですね。
ハン・ソロのイメージが強いのかな( -_・)?
当時人気が出て来たハリソン・フォード、リドリー・スコットの映画に出れると最初はうれしかったそうですが、
監督と女優と仲が悪く、あまりブレードランナーは好きな映画ではなかったそうです。😓
監督がデッカードはレプリカントだと言い切ってしまったことに彼は反発していたそうです。
*デッカードは人間かレプリカントかはずっと論争になっています。『ブレードランナー』が本物そっくりの存在は本物と違わなくないか、映画的にはよくできたレプリカントは人間と何が違うんだという問題を投げかけているので、この論争は曖昧にしといたほうがいいと思いますね。
また、女優の演技の下手さにハリソンフォードはいらだっていたそうです。😓
*レイチェルに「キスして」とデッカードが言わせることで人気の高いラブシーンですが、このシーンをハリソンフォードはマジで荒ぽっく演技したようです。ショーンヤングは後のこのシーンを「女性虐待」だと語っています。ポール・M・サイモン『メイキング・オブ・ブレードランナー』ソニー・マガジンズ。p184参照。
続いて女性レプリカントであるレイチェルを演じたショー・ヤング
ハリソン・フォードと相性がよくなかった彼女は、この作品以降そんなに活躍していません。
というか、けっこう面倒ごとをおこしています。
バットマンにでたくて、監督のティム・バートンの前にキャット・スーツ姿で現れるという中々なことをしています。😓
*ショーン・ヤングが出演したくてしょうがなかったバットマン
なんともトラブルメーカーの彼女は『ブレードランナー2049』で最新技術のおかげで若いころの姿で登場しました。これはちょっと驚きでした。
*ブレードランナーの2019年より30年後の世界を描いた続編
ハリソン・フォードが再登場したり、前作を意識した仕掛けが随所にあり、ファンにはうれしい作品だったかと。
最後に敵方のレプリカントのリーダーであるロイ・バッティーを演じたルトガー・ハウアー
この俳優さんはオランダからアメリカに来た人で割とハリソンフォードと仲が良かったそうです。
この人は他の人がいろいろトラブっているなか、着実に演技をこなしているように思います。というか、敵役なのにめっちゃカッコいい役です。( ・∀・)
なので、この人は演じた役のほうを語っていこうと思います。
そもそも感情を持つと危険だからとレプリカントは4年と寿命が定まっていました。
けど、レプリカントゆえに普通の人間が経験できないようなことを短い時間の中で経験します。
その貴重な経験も死という圧倒的な時の前でも虚しく消えてしまうことを訴えるシーンは映画史に残る名シーンのひとつです。
*ブレードランナーの中で一番感動的な名セリフ
「人間には信じられないようなものを私は見てきた。オリオン座の近くで燃える攻撃用宇宙船。タンホイザー・ゲートの近く、暗闇に輝くCビーム、そんな思い出もやがて消える・・・時が来れば。雨に・・・消える・・・涙のように。死ぬ・・・時が来た」
ロイ・バッティーの死に様は限りある人生を必死に生きようとする人間の美しさのように思えてなりません。
人間の敵であるはずのレプリカントのほうが人間らしく思えてしまい、観客はこちらに感情移入したくなります。
けど、そのとき人間を人間たらしめるものは造り物かどうかではないと観客は自分たち人間が造った存在の犠牲のもと悟ります。
ここでのロイ・バッティーは人間に反抗するフランケンシュタインの系譜のモンスターでありながら、イエスの役割を果たしていると解釈できるかと思います。
知恵の実を食べた罪ある人間が自分たちに似せて造った存在に許されるというお話はフランケンシュタインの物語を次の次元へと進めたと思います。
*フランケンシュタインについては次の記事もおすすめ!
いやー、ブレードランナーは語ることが多いですね☺️
他にもユニコーンの夢、写真を分析するシーンのモチーフはファン・ヤン・アイクのアルノルフィーニ夫妻だとか、シード・ミードのデザインとか、いろいろあるのですが長くなってしまったので、今回はここまでにしたいと思います!
*『ブレードランナー』の次は続編である『ブレードランナー2049』に挑戦したいですね!
前作へのリスペクトが随所にあり、また謎が多くあり考察のしがいのある映画かと。
さて、2019から2049へと至る前日譚を描いたショートフィルム3本あるので、ファンはチェックしましましょう!
ショートフィルム一作目を作ったのは『カウボーイビバップ』の監督渡辺信一郎。
*参考書籍・参考資料
今回参考にしたのはこちら!ブレードランナーを深く知りたい人はぜひ!