静寂を割くアンサンブルと
光が織り成す幻惑の時間

これはうつつか それとも夢か
魔法のような宴のはじまり

不規則な明滅 波打つ歓声
現実の喪失 脈打つ鼓動

無邪気に笑う貴方の顔に
伝う雫は宝石のようで

手を繋いだまま 瞼を閉じて
合わせる唇の温もり胸に

花冷えに 震える肩を 抱き寄せて
幻想に願う 煌めく明日を

いたずらに ふと舞い降りた 花の雨
払う振りして 頭を撫でる


淡い月影に照らされた
染井吉野は鮮やかに

夜風に戦ぐ樹の下で
覚えたての唄を口ずさみ

見上げた先の頂に立つ
幸せ載せた観覧車

見渡すかぎりの七色集め
輝く瞳に焼きつける

紺碧に 散りばめられた 星たちを
繋げて描く 二人の未来

清空を 貫く流星 一筋の
軌跡に誓う 確かな明日を

「貴方がこれを読むときには
私はこの世にいないでしょう」
よくある書き出しの物語
遍くそれは最期の願い

弱りきった身体に込めた
力いっぱい筆を走らせ
決してそれは外に見せずに
振舞う笑顔は頬を紅らめ

貴方の好きな猫の話や
旅の話で筆は進まず
たくさん残した想い出たちが
頭の中を駆け続ける

やりたいことは
まだまだたくさんあるけれど
刻は迫り
行かなきゃならない場所がある

貴方と語った夢物語
夢は夢のまま連れてゆく
二人で見つめたあの葉桜は
綺麗な花をまた咲かせるか

迎えが来るその時は
せめて笑顔は絶やさずに
貴方との時間がとても
幸せだったように…

物語はここで幕を閉じ
静かに目を閉じる
微笑みかけた天使が唄う
「二人の笑顔はまぶしいね」と…

可憐な衣を纏った木々は
待ちわびる街を染めてゆく
見上げる貴方のその横顔に
瞳を奪われ  そっと手を繋ぐ

儚く過ぎゆく歓びの中で
人はそれぞれの想いを乗せる
散り初む風が頬をくすぐり
季節はまた巡りゆく

初夏を告げる緑のヴェールは
心地よく薫る風となり
やがて葉は落ち  雪が積もり
震えながらじっと春を待つ

春が来たらと  私の中に
新たな蕾が生まれた
木々が宿した蕾とともに
暖かな光に包まれる

今年もまた顔を並べて
この季節を迎えられたね
あの桜に誓う私の決意
ずっと二人で歩んでいきたい

華やぐ街が奏でる旋律
ふいに零れた涙を隠す
見つめ合った二人の顔は
同じ跡を残し照れ笑う

今日もこの葉桜の下を
寄り添う笑顔が歩いてゆく…