夜が明けきらない午前三時。

 主婦は眠れず、リビングのソファに身を沈めて

 いた。

 


 カーテンの隙間から、外の街灯がかすかに差し

 込む。

 


 それは、まるで誰かがこちらを覗いているような

 光だった。



 テーブルの上には、昨夜届いた一枚の封筒。

 ポストの軋む音とともに落ちたその手紙には、

 宛名も差出人もなかった。



 中には、一枚の写真。

 そこには、彼女の家のポストを映した映像が切り

 取られていた。

 時間は昨夜、彼女が外を覗いた直後。



 “見られている”――その確信が、冷たい指先を

 伝って広がる。


 


 スマホが震えた。

 通知欄には、見覚えのないアカウント名。


 《あなたの家の窓、いつも開いてますね》


 息を呑んだ。

 返信しようとしても、指が動かない。

 だが、ふと気づいた。


 ──この文面。どこかで、見覚えがある。


 思い出したのは数日前。

 “青い封筒”をめぐるハッシュタグに紛れていた、

 ある匿名投稿。


《#青い封筒 #罪を告げる声 #見ているのは誰》


 同じ文体。

 同じ語尾の癖。

 まるで、誰かがフリーターの口調を模倣している

 ように見えた。


 


 (まさか……あの人が?)


 リビングの照明を落とし、カーテンを閉めた。

 けれど、闇の中に浮かび上がるのは、

 “誰かに見られている”という感覚だった。


 机の引き出しを開ける。

 中から取り出したのは、一台の古いタブレット。

 夫が使っていた監視カメラのアプリが、

 まだ息をしているかのように光っていた。


 画面には、向かいのマンションの屋上。

 そこに小さな影。

 夜風に揺れるフード。


 拡大した瞬間、

 タブレットが一瞬ノイズを走らせ、

 静止した。


 その画面に映っていたのは――

 カメラを構えた“自分”の姿。


 息が止まった。


 「……これ、どういうこと……?」


 画面が黒く沈み、

 通知音だけが鳴り響いた。


《#青い封筒 #罪はまだ終わらない》


 








📩 次回予告


 映るはずのない“自分”を見た夜。

 主婦の記憶が、過去と現在をつなぎ始める。

 そして、封筒の本当の差出人が――。


 👄鏡の向こうにいたのは、もう一人の

   “あなた”かもしれない……