『スリル・ミー』
7月15日(日) 12:00
劇場:銀河劇場
小西くんと良知くんの回がどうしても見たくて、行ってきました。
舞台上には、役者二人と、ピアニスト一人。
簡単なセットに、音楽はピアノ一台。
これだけで、あんなにも独特な世界観を創りだせることに驚きました。
いくつか見てきた舞台の中で初めて見た感覚。
他の組み合わせも見て見たいです。
個人的には実際に見ている時よりも、観劇後に色々と考えを巡らせながらハマっていく作品です。
ああ、面白かった!となるわけでもないのに、いつの間にかスリル・ミーのことばかり考えてしまう。
この作品は全体を通して、重かったです。
私の愛や、彼が理想とするもの。
だからといって最後に残ったのは、後味の悪さではありませんでした。
ニーチェの思想を崇拝し、自らを超人だといいはる彼は、
自分が特別であることを実感する為に盗みや放火などの犯罪行為を繰り返します。
同じく天才である私に(彼よりもIQが高いそうです。)彼は協力を頼みますが、彼を愛している私はそれを断りきれずに、犯罪に手を染めて、遂には血の契約まで交わしてしまう。
この舞台は今回が初見なので、贔屓目もあるのかもしれませんが、
小西くんの彼と良知くんの私はなかなかバランスがいいように思います。
小西くんが演じる彼は正統派イケメンで、みんなが夢中になるのもわかります。
けれど上辺の友達しかいない印象。
役の年齢にしては落ち着いていて、大人っぽいです。
自信家で、プライドが高いけど脆い。
思い通りにならないとイラついてしまうような部分はまだ子供っぽさもあるように見えました。
私は天才ですが、純粋そうで、
恋の駆け引き云々には疎いように見えました。
とにかく彼が好きで好きで、彼がそばにいてくれるなら、何をしてもいい、とちょっと彼への想いが
暴走気味に想えます。
聞いた話では、新納田代ペアはすごく色気があるらしく
この二人はそこまでではないのかもしれませんが、ところどころ色っぽさを垣間見せていました。
小西くんって笑うと可愛らしいんですが、目が色っぽいと思います。
キスシーンは恥ずかしくて双眼鏡をのぞけなかったんですが、噂によると、結構激しいようです。
次もし見る機会があれば、迷わず双眼鏡を覗こうと思います。
この作品が愛の物語だと聞いて、彼の愛がどこにあるのか戸惑いました。
Sである彼はMである私にサディスティックに接することで、
歪んだ愛情表現をしていたのかも。
これは数回見て、気付ける部分だと思います。。
けれど改めて思い返してみると、やさしい炎のシーンで身を寄せ合っている二人の姿からは
愛が溢れていたように思います。
彼の愛は表面からは見えないものですが、結局は私にだけその愛が伝わっていればいいのかも。
彼の友達に、そんな空っぽな奴らなんの意味もないんだ!と詰め寄る私をわずらわしいと突き放しながらも、
私が自分のことを愛し続けている自信があったからこその態度だったのかもしれません。
彼の暴走は次第に悪化し、遂には軽犯罪には止まらず、誘拐殺人にまで至ります。
最初憎い弟を殺すと言い張る彼に、彼も家族だ、と私が止めるのですが
それに納得した彼が、近所の小学生をターゲットにします。
下校中の子供を車へと誘う彼。
小西くんの囁くような美声の歌声がとても優しげで、私が子供ならはいはいとついていってしまいそう。
けれどその甘い仮面の下からは、狂気に歪んだ微笑みを感じさせます。
殺害後、罪悪感など微塵も感じさせずに興奮している彼。
静かに興奮するのが、また狂気じみています。
文字が欠けているタイプライターで、子供の家に脅迫状を書くのですが
私がその脅迫状を読む時、眼鏡がないことに気付きます。
数日後に死体が発見され、
背中の傷で身元が判明したり、眼鏡が落ちていたりと
完全犯罪どころか、次々とボロがでてきます。
しかも私の眼鏡は三人しか持っていない高級品で、すぐに持ち主が私だと突き止められてしまう。
そして警察から私に声がかかります。
焦る私に、俺の言うとおりにしていれば大丈夫だ、と甘く囁く彼。
彼の言うとおりにアリバイを工作し、一時的に逃れるものの、まだ疑いは晴れず
警察から帰ってきた私に、彼は豹変したように怒りを露わにします。
自分の完全犯罪計画が崩れたのは全て私のせいだとでも言いたげに批判し、
私に責任を押し付けて、自分だけ警察から逃れようとします。
可愛さ余って憎さ100倍とはこのことでしょうか。
警察に全てを話すという言葉通り、私は警察で全てを話して、
彼も捕まってしまいます。
私は警察に、すべてを話せば罪を軽くしてやると言われたのだとか。
最初は強気に抵抗する彼ですが、
僕は嘘をつかずに全部話した、そこが君と違う。と強気で返す私に、
「ふたりとも助かる方法があるはずだ」なんて甘い声で言い始めます。
こいつ、都合よすぎる!(笑)
捨てないでくれ、と私に縋るようなキスをしますが、どうやらここの
私は泣いていたようです。
またしても双眼鏡を覗けなかったのが悔やまれます。
「いいよ、何でもしてあげる。」と承諾。
拘置所で、私に「起きてるか…?」と確認した後、
歌にのせて不安や恐怖を話しだす彼。
「死にたくない!」と。クールな彼の仮面が崩れていきます。
私はこれを狸寝入りしながら聞いて、どう思ったんでしょう。
私の父が雇った優秀な弁護士による長時間に渡る弁論の末、
ふたりは死刑から免れ、終身刑+99年の判決がくだされました。
護送車で、「これでずっと一緒だ」
けれど見張りはお金でどうにでもなる、と言います。
そうして彼を裏切っていたことを、私は静かに彼に告げます。
あの日、わざと眼鏡を落としたのだと。
「超人は僕のほうだったね」
と勝ち誇った顔で言うのです。
涙を流しながら。
手に入れたいから、自ら足を踏み外し、相手の人生までめちゃくちゃにしてしまう。
行き過ぎた愛を見ているようでした。
個人的にはその裏に、彼に認めてほしいという想いもあったように
思えました。
「もし死刑になったら」
「一緒に死ねるなら、それもわるくない」
彼は私の狂気じみた愛に身を震わせます。
手のひらの上で転がされているのは私と見せかけて、彼の方だった。
でもこれは、悔しさなどから彼をはめようとして思い立った行為ではなくて、
純粋に彼と一緒にいたかったからなんだと思います。
良知くんの私はとにかくまっすぐなんだと思います。
他に彼を手に入れる方法がわからなかったから、彼を裏切ってでも手に入れたかった。
永遠とは言わない、死ぬまでは
二人はずっと九十九年、永遠に
この時の彼の追い詰められていく感じが、なんとも言えませんでした。
私の愛に押しつぶされそうになっているような。
この彼私は他のペアと比べて異質で、
小西くん演じる彼はMで、良知くん演じる私がSだと聞きます。
個人的には、根本は彼がSで、私がMなのですが、
究極のSはMにもなり得るし
究極のMがSにもなり得るというのは、正にこのことなんだと。
そこまでして手に入れた彼との時間ですが
彼は最終的に囚人に刺されて死んでしまいます。
ある意味、お互いからの解放だったのかもしれません。
彼を失わなかったら、私は殺人を悔やんだりすることはなかったかもしれない。
大人になった彼がその時のことを語らされます。
「あんな事件がなければ、私は今でも彼を…」
と私は声を詰まらせます。愛している。そう続けたかったんだと思います。
涙を流し、思い出すことを放棄する私。
彼への愛が、私の中から消え去ることはないんだろうな、と思いました。
元の事件を調べていると、彼がその囚人を襲おうとしたのだとか。
私が駆け付けたころには遅かったようです。
もしそんなことがなければ、
どんな状態であろうと、私が望んだ通り、二人は永遠に一緒だったんでしょうね。
そして仮釈放が決定し、自由の身になった私。
つかまった時の所持品の中には、小銭と、煙草と、高校の時の彼の写真が。
すると舞台の階段上に彼が登場して、「レイ、」と私の名を呼ぶ。
(これは、写真の中の彼でしょうか。)
「待ってたよ」
さあいいか
僕たちふたり共犯者
だからスリル・ミー
スリル・ミー
という私の歌で暗転。
(実際の話では、私はこの後花屋の女性と結婚したそうです。
66歳で死亡し、寝室には彼の写真が飾られていたとか。)
客観的に見ているとラブストーリー性が感じられないこの作品。
考えれば考えるほど、深いです。
私視点で見ればこれは完全なるラブストーリーだと思います。
小西くんと良知くんの危ういバランスが絶妙でした。
また彼らがこの舞台に出演してくれますように。