『蒼い妖精とピノッキオ』
劇場:あうるすぽっと
7月7日(土) 13:00 17:00
7月8日(日) 11:00
人形を人間にしたくない妖精と、人間になりたい人形の物語。
妖精たちに担当する人形が振り分けられます。
蒼い妖精は、自分をこの仕事から外してほしいと知恵の妖精に頼み込むのですが、この仕事から解放される為には、風にならねばならないのだとか。
蒼い妖精は、次に自分が人形を愚かな人間に変える時が訪れれば、風になるように自ら呪文をかける。
人形職人、ジェッペットじいさんの孫、マリアから、「人間は、夢を見るのよ。」と教わるピノッキオ。
死んだお母さんが子守歌を歌ってくれると嬉しそうに語るマリアの話を聞いて、
僕も夢の中で死んだお母さんの子守唄が聞いてみたいと純粋に願います。
「ぼく、人間になりたいんだ!」
そう叫ぶピノッキオに、蒼い妖精は人間の醜さを伝えますが、
それでも人間になりたい、夢を見てみたいと願うピノッキオ。
蒼い妖精は、自分が今まで人間にした、3つの愚かな魂の元へピノッキオをつれていきます。
劇団ひまわり創立60周年記念公演、第三弾「蒼い妖精とピノッキオ」
私が知っているピノキオとは異なって、大人向けの絵本のような作品。
自分が人間にした魂への戸惑い、ピノッキオの変化や成長が、蒼い妖精視点で描かれていました。
登場時、ピノッキオは本当に木でできた人形で、馬場さんが後ろで声をだしながら、三人がかりで人形を操っています。
ピノッキオを演じている馬場さんは、常に優しい表情をしています。
五感で感じる事はできないけれど、自分の知らないことに興味を持って、質問して、学んで。
ピノッキオの存在は、人間の子供と変わらない気がします。
ぎりぎりまでピノッキオをどう演じるか、悩んでいたんだと思いますが、
個人的にはそうきたかーって感じでしたが(笑)
人形独特のカクカクとした動きに、セピア色の体が相まって本当に木でできた人形のよう。
体は大きいけど、子供みたいに素直なピノッキオはとても可愛らしかったです。
純粋だからこそ、 「死んだお母さん、夢の中で子守歌を歌ってくれる?」(曖昧)
と問いかけながら、フォックスの頬に触れようとするピノッキオの表情には背筋がぞくぞくしました。
あまり書くと長くなっちゃうので。
個人的に、ミスターフォックス役の桑野くんがとてもよかったです。
最初はおじいさんの役なのかと思って戸惑いましたが、あの切り替えた後のギャップがたまらない。
フォックスは蒼い妖精に恋してたんだろうな。
蒼い妖精も笑わせてくれるフォックスが大好きだったんだと思います。
最後にワルツを踊ってる時の表情は何と言っていいのか、幸せそうで切なくて、胸にくるものがありました。
愛しいけれど、妖精の頬に触れることができずに手を引っ込める瞬間。
また機会があれば、桑野くんの演技を見てみたいです。
ロバ大佐は人間の醜い部分を全面に出していたので、
見ていた時は衝撃のあまり共感できなかったんですが、
今思えば確かにあの場面が一番生々しく、日常にありふれているのかもしれないですね。
中嶋さんの蒼い妖精は、素晴らしかったです。
最初から痛々しい表情をしていた蒼い妖精ですが、
口では愚かだと罵りつつも、実際は3人の子供を心配する母親のようでした。
フォックスの後のシーンの、ピノッキオの体に空いた風穴で音を奏でる場面から、一気に表情が柔らかくなって、
海の中でピノッキオに語りかける優しい笑顔が、蒼い妖精の本来の表情なんだろうなと。
だからこそ三人はあんなに彼女を好いていたんでしょうね。
人間になって、おいしいパスタを食べなさい、恋をして、と囁く妖精は子供の幸せを願う母親で、意識が朦朧とするピノッキオは、眠たそうな赤ちゃんでした。
そうしてピノッキオを人間にかえた妖精は、風になりました。
目を覚ました時、ピノッキオは初めて知る痛みに悶えます。
初めて知る、海の匂い。
ピノッキオはどうしてこれが海の匂いだとわかったんでしょう。
純粋に目の前に広がっているからなのか、本能的なものなのかな。
指摘されて、自分が人間になっている事に気づいたピノッキオは、
ジェッペット、マリアと抱き合って喜びます。
「おかえり」人形であっても人間であっても、ジェッペットは同様の愛を与えてくれたと思いますが、やっぱり一緒に生きていきたいと願うものなのかな。
ここから勉強して、恋をしていくピノッキオに待ち受けているのは喜びだけじゃないと思いますし、
絶望することだってあるかもしれない。
ピノッキオがどう変化していくのか、その後の話も気になりますね。
ピノッキオが人間になりたいと願った理由は、夢を見たいというとても単純なものでしたが、
人形には夢の中で死んだお母さんが子守歌を歌ってくれるっていう感覚は到底理解できないでしょうし、大変興味深いものなんだと思います。
人形が命を持つことについて人間の大人は難しく考えがちですが、難しいことなんて考えない単純で明確な理由がピノッキオの子供らしさ、純粋さを表現していてよかったです。