毎年4月~5月(東京23区は6月)になると、市町村(区)から固定資産税の納税通知書とともに「課税明細書」が送付されてきます。

 今回は、「課税明細書」がどうなっているか、これで評価方法まで分かるのかについて解説します。

 

 なお、ここに掲載する「課税明細書」(例)は、横浜市のホームページに掲載されているものを参照しています。

 

土地の「課税明細書」(例)

 土地の場合は、「負担調整措置」が行われていることから、表記も評価計算も複雑になっています。

 

※「負担調整措置」の内容は「(第4号)固定資産税の土地は『負担調整措置』が行われている(住宅用地の場合)」で説明してあります。

 

 まず⑤と⑥から、この土地は200㎡以下の小規模住宅用地であることが分かります。

 

 ⑦「価格」は地価公示価格の7割で19325697円、⑩「固定資産税本則課税標準額」はそこから1/6にして3220949円、⑪「都市計画税本則課税標準額」は1/3で6441889円となります。

 

 本来であれば、⑩「本則課税標準額」=⑫「(今年度)課税標準額」になるのですが、「負担調整措置」により、⑧「前年度課税標準額」と③「負担水準」により調整がなされています。

 

 「負担調整措置」としては、⑧「前年度固定資産税課税標準額」3020000円が⑩「固定資産税本則課税標準額」3220949円のどこまで達しているかの③「負担水準」を求めます。この土地の場合は、⑧/⑩により③「負担水準」93%となっています。

 

 ③「負担水準」が93%であれば100%に達していないため、「⑧+⑩×5%」の計算により今年度の課税標準額を求めます。

 

 その結果、今年度の課税標準額は、⑫「固定資産税課税標準額」3181047円、⑬「都市計画税課税標準額」6441899円となり、税相当額は、それぞれ1.4%、0.3%を乗じて⑭44534円、⑮19325円となります。


 現在の固定資産税土地の評価は、このように⑧⑨「前年度課税標準額」と③「負担水準」を挟む負担調整措置により複雑になっています。

 

家屋の「課税明細書」(例)


 家屋の場合は、「課税明細書」の表記はあっさりとしていますが、実は評価額を計算する再建築価格方式が複雑で、「課税明細書」を見ても評価方法は分かりません。

 この「課税明細書」には、④「軽減相当税額・減額事由」の左端に小さな文字で「6A」とあります。

 右欄の「主な減額事由コード」によると、「6A」は「一般の新築住宅」とありますので、この家屋は「一般の新築住宅」としての減額がされていることを意味しています。ということは、この家屋は新築後3年以内であることが分かります。


 「一般の新築住宅」の固定資産税の減額は、居住部分の割合が全体の床面積の1/2以上で、その床面積が120㎡以下、かつ2階以下の家屋については、新築後3年間は課税標準額(税額)が1/2に減額されます。

 

 この家屋は、⑤「種類・構造」が居宅・木造、⑥「課税床面積」が130㎡で「6A」とあるので、⑫「固定資産税課税標準額」4377500円が⑦「価格」8755000円の1/2になっています。

 

 なお、「一般の新築住宅」の場合は、3年間減額になるのは固定資産税のみで都市計画税は減額にはなりません。ですから⑦=⑬8755000円となっている訳です。

 

 税相当額は、⑫×1.4%=⑭「固定資産税相当額」61285円、⑬×0.3%=⑮「都市計画税相当額」26265円となっています。

 

 以上のとおり、家屋の「課税明細書」は簡略な表記になっていますが、なぜこの価格(評価額)になっているのかが「課税明細書」では分からないということです。

 

新築時の「評価計算書」

 

 固定資産税家屋の評価が正しいか否かを確認する場合は、その家屋の新築時に評価した計算書(「評価計算書」)をチェックする必要があります。

 

 ここに新築時の家屋「評価計算書」の例を掲載します。

 

 なお、この「評価計算書」は、家屋所有者(含む代理人)のみが、申請により取り寄せることが出来ます、

 

 家屋の「評価計算書」は、「総括表」と「内訳表」(5ページ)からなりますが、ここでは「内訳表」については一部(1ページ目)を紹介します。

 

<家屋新築時の「評価計算書」(総括表)>

<家屋新築時の「評価計算書」(内訳表・1ページ目)>

 このように、家屋の評価計算がいかに複雑で難しいかがお分かりになると思います。

 

(以上です)