固定資産税の納税義務者は、原則として毎年1月1日(賦課期日)の固定資産の所有者であり、土地又は家屋についての所有者とは、登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録されている者になります(台帳課税主義)。

 

 では、その納税義務者が所有権移転により変更した場合、または死亡した場合、次の納税義務者はどうなるか、です。

<事例A> 賦課期日前にX→Y所有権移転

 

 賦課期日前にXからYに所有権が移転され、所有権移転登記がされていれば、問題なくYが納税義務者となります。

 

 ところが、所有権がXからYに移転されているにもかかわらず、賦課期日に所有権移転登記がされていない場合は、Xがその年度の納税義務者となってしまいます。

 

 つまり、固定資産税の納税義務者は、必ずしも真の所有者でなく、賦課期日(1月1日現在)の登記名義人となります。

 

<事例B> 賦課期日後にX→Y所有権移転

 

 賦課期日後にXからYに所有権移転されても、賦課期日にはXが納税義務者ですので、賦課期日後の途中でYに移転しても、その年度の固定資産税の納税義務者はXのままとなります。

 

 ただし、売買による所有権移転の場合には、不動産業者により「固定資産税の精算」が行われるのが普通で、これにより、契約(決済)日以降の固定資産税はYの負担として、日割計算でその日以降の固定資産税分がYからXに渡されます。

 

<事例C> 賦課期日前に所有者Xが死亡

 

 賦課期日前にXが死亡している場合ですが、相続の遺産分割協議と所有権移転登記が行われ、賦課期日現在に納税義務者が確定しているときは、その相続人(登記簿名義人)が納税義務者で問題ありません。

 

 ここで、問題となるケースは、所有者Xが死亡し法定相続人が複数いるが、遺産分割もされず不動産登記もXのままになっている場合です。

 

 この場合には、法定相続人全員が「現に所有している者」となり、法定相続人は「連帯納税義務」を負うことになります。


 この「連帯納税義務」とは、仮に法定相続人が3名であったとした場合、その3名はそれぞれが全員分の納税義務を負うという意味ですので、「自分は3分の1のみ負担する」との主張はできません。

 

<事例D> 賦課期日後に所有者Xが死亡

 

 賦課期日後にXが死亡した場合ですが、この場合も法定相続人(3名)間で遺産分割協議と所有権移転登記が行われている場合は、その固定資産を取得し登記名義人となった者が「事実上」の納税義務者(「形式上」は1月1日現在の所有者X)となります。

 

 しかし、事例Cと同じく、法定相続人3名の間で遺産分割協議が成立していない場合にどうなるかということです。

 

 事例Cの場合は、法定相続人3名の「連帯納税義務」でしたが、この事例Dでは「3名の法定相続分応分の負担」となります。


 つまり、法定相続人3名は、それぞれ自分の法定相続分(割合)の責任を負うということになります。

 

(以上です)