観客も当て書きされているミュージカル『日本の歴史』 | 拝啓、ステージの神様

拝啓、ステージの神様

ステージには神様がいるらしい。
だったら客席からも呼びかけてみたいな。
観劇の入口に、感激の出口に、表からも裏からもご一緒に楽しんでみませんか。

拝啓、ステージの神様。
三谷ファンの記憶をグリグリとえぐられます。

 

三谷幸喜作・演出のシス・カンパニー公演、

ミュージカル『日本の歴史』を観た。
出演は7名。演奏は4名。客席は約600+立見あり。

劇場は世田谷パブリックシアター。

 

この数字だけ見るとコンパクトだが、

描かれるのは卑弥呼の時代から第二次世界大戦まで、

なんと壮大なスケールなのだろう。

でもそれもきっと因果なのだ。歴史の一部なのだと観た人はきっと思う。因みに、因果はこのミュージカルのキーワード。

ミュージカルナンバーにはその名も♪INGAという曲がある。

「原因の因に結果の果」で因果。
「 」鍵カッコをつけたのは、これがミュージカルの歌詞になっているからだ。

出演者7名は、皆、主役級。

中井貴一、香取慎吾、新納慎也、川平慈英、シルビア・グラブ、宮澤エマ、秋元才加(敬称略)

この7名が歴史の主役にもなれば、歴史の端役にもなり、ミュージカルのアンサンブルにもなる。

オペラグラスで誰かの表情を追っかけているうちに、時代も主役も立ち位置も変わってしまうから、もうひとときも退屈しているヒマがない。


三谷幸喜という人は、役者に当て書きをする脚本家だ。

この作品も織田信長をシルビアさんに演じてもらいたい、平清盛を宮澤エマさんに……と発想したとインタビューやパンフレットに書かれているが、このミュージカルは、観客である私たちにも当て書きされていた。

因果が自分に関係していると感じさせられるのだ。

だから笑えるようで笑えない。

事実、私は他の人たちはたいてい笑ってしまうシーンで、ゾワッとなった。「やだ、うちのこと?なんでこのタイミングで!?」

そんなシーンがあったのだ。

 

もっとわかりやすく言えば、中井貴一さんが演じる源頼朝に、

大河ドラマ『義経』を熱心に見ていた人なら因果を感じるだろうし、

三谷さんの初大河『新選組!』も欠かさず見ていた人ならば、香取慎吾さん演じる相楽総三の姿や動きが、あのシーンとかあのシーンに重なり因果を感じただろう。

シュミット家とオブライエン家の栄枯盛衰と親子関係に因果を感じる人もいたはずだ。

香取慎吾さんが演じるトーニョとシルビア・グラブさん演じるフレゲンマイヤーさんがショービジネスを歌う♪人生で大事なことは、

彼を長く応援している人たちには、心の痛点に直結する因果を感じたに違いない。

 

そうやって観客も因果に巻き込んで、自分も歴史の一部なのだと思い知らされる作品を、この平成最後の年末に上演してくれるだなんて、まったく。

 

荻野清子さんのメロディーと三谷さんの歌詞はつい口ずさみたくなる

ものばかり。因果という言葉をこんなに使いたくなってしまったのも、

それが原因だ。

復習なんて真面目にやるタイプじゃない人も、このミュージカル『日本の歴史』なら何度だって復習したくなる(リピートしたくなる)。

でもプラチナチケット過ぎて、そんなことは出来そうにないというのもまた因果!?

WOWOWで春に放映決定だそうなので、復習は少し時を置くとしよう。

 

川平さんの『ビッグ・フィッシュ』の再演も楽しみになったし、

新納慎也さんや宮澤エマさん、秋元才加さんの出演作ももっともっと観たくなる。

たった一つ後悔していることといえば、シルビアさん演じるエヴァと、宮澤さん演じるパットの歌うナンバーに拍手を送れなかったこと。

そこだけ巻き戻して観客としてやり直したい。

そればかりぐるぐると後悔している。

でも後悔しても歴史をさかのぼることは出来ないんだよな。

ほら、やっぱりなんか当て書きされているような気がする。

 

<公演日程>

2018年12月4日(火)~12月28日(金)

世田谷パブリックシアター

 

2019年1月6日(日)~1月13日(日)

梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

 

 

これです・・・・・・「INGA」原因の因に結果の果、歴史は因果の繰り返し

名曲っ♪
 

 

パンフレットの中に出てくる歴史学者・磯田道史さんと三谷さんの対談も読みごたえたっぷり。三谷さんが磯田さんの圧に押されている感じも面白い。