火の粉舞うひとり芝居の美しさ『成田屋おまつ』 | 拝啓、ステージの神様

拝啓、ステージの神様

ステージには神様がいるらしい。
だったら客席からも呼びかけてみたいな。
観劇の入口に、感激の出口に、表からも裏からもご一緒に楽しんでみませんか。

先月、三越劇場で上演された、舞台女優 二宮さよ子さんによる一日のみ、2回だけのひとり芝居『成田屋おまつ』を観た。

 
おまつは、成田屋 四代目 市川團十郎の妻。
芸事に長けていたおまつは、夫 菊次郎を亡くした後、義理の甥、二代目 菊之丞に目をかけていた。
あの歌舞伎の名演目、「娘道成寺」を襲名披露で見事に舞った二代目 菊之丞をバックアップするために、四代目 團十郎の後妻となったおまつ。菊之丞とおまつの絆とその運命とは。
 
ひとり芝居というのは、なんとも高度なテクニックを要する。
そこにはおまつ一人しかいないのに、相手がいるように見せ、状況を説明しつつ、見える仕草も、その向こう側にある感情も見せていくからだ。
 
冒頭、烏帽子をつけ、娘道成寺を舞うおまつ、その神々しさが夢の中の出来事のように見えて、そこからおまつの生きる世界へと誘われた。
ものはそこにはないけれど火箸をさばく手つきが色っぽく、着物の襟の抜きっぷりに粋を感じる。
 
舞台美術も注目だった。
 
その反物が舞台上手から下手へ、斜めにかかっているのだが、お芝居後半ではそれに照明や装置の演出が加わり、ダイナミックに役割を果たしていた。
 
物語は悲劇的な結末に向かっていくが、そこにいるおまつは、愛も哀しみも抱えながらもどこまでも強くそこに存在していた。
 
舞台には二度の紙吹雪が舞った。
一度目は桜。吹雪ではなく、チラリ、ハラリも散る感じが絶妙でうっとりできる演出。
二度目は火の粉。金色の吹雪だったが、それはまさしく燃え盛る炎の中の火の粉だった。
 
雪や桜はこれまでも目にしたことがあったが、あの火の粉は目に焼き付けられた。
 
たった一人なのに、そしてとても華奢な女優さんなのに、舞台での存在感が素晴らしく、舞台女優とはまさにこういう方のことを言うのだわと思わずにはいられない。
その重厚感が、歴史ある三越劇場の重厚感と見事に調和していた。
 
 
この題字も二宮さんの直筆
 
〈公演日程〉
2018年4月24日(火)
三越劇場