近づいてくる!! 『同じ夢』 | 拝啓、ステージの神様

拝啓、ステージの神様

ステージには神様がいるらしい。
だったら客席からも呼びかけてみたいな。
観劇の入口に、感激の出口に、表からも裏からもご一緒に楽しんでみませんか。

拝啓、ステージの神様。

今年のテーマを確信しちゃいました。


赤堀雅秋さんは、むちゃくちゃ声がデカイ。
他の人とのアンバランスさがものすごい。
いいのか?と一瞬思うけど、実際そういう人っている。
それで周りはヤキモキしたりもするんだけど、なぜか成立しちゃう感じの人、いる。

そんな役者・赤堀雅秋さん作・演出の舞台『同じ夢』をシアタートラムで観た。

出演/光石研、麻生久美子、大森南朋、木下あかり、赤堀雅秋、田中哲司

気になりすぎる組み合わせなことに加えて、赤堀さんが気になる存在だったのは、
彼が私の地元、船橋出身だということだ。

開演前にパンフレットをめくったら、物語の舞台は、船橋だった。
普通は演劇の舞台になどならない、わが地元がそうなると、結構ドキドキしてしまうものだ。
赤堀さんと年齢がほぼ同じというのもドキドキに拍車が加わった。

精肉店を営む家の親子と、そこに集まる人たちのある一日。
家のつくりや家具に、昭和な色が見える。
どれも見覚えがある感じがしてドキドキがソワソワに転じた。
あ、ちなみにわが家は肉屋ではないけど。


父と娘と祖父の三人暮らしになって10年。
母は10年前、交通事故で亡くなった。
その日は母の命日だった。

昭雄(光石研)と文房具屋の佐野秀樹(田中哲司)は、古くからのご近所同士。
稲葉(赤堀雅秋)は手癖の悪い、精肉店の従業員。

寝たきりの祖父の介護のためにヘルパーの高橋美奈代(麻生久美子)が亀戸から通ってきている。
よそよそしいようで馴れ馴れしい田所(大森南朋)は、実は10年前の交通事故の加害者で、毎年命日に線香をあげに来ている。

もうこういう設定が書いてあるのを読むだけで、なんだか嫌~な感じがするだろうか。
どうして嫌~な感じがするかといえば、なんかリアルだからなのだ。
自分のことじゃなくても、周りには、どこかには本当にありそうな設定だからだ。

彼らのやりとりが始まると、自分のことじゃないと、適度な距離感で観はじめたはずなのに、
なぜか作品がどんどん近づいてきて、
隣の通りで起こっている話かも、
三軒となりの家の話かも、
知り合いの家の話かも、
わが家の話かも、
となる。

いや、実際は、そうではないのだけど、そう思わされる。
これは、わが地元が舞台だからというだけではなさそうだ。
この作品と、この出演者と、この空間がそうさせるのだ。

そして実は地元あるあるも、やっぱりしっかり入っていた。
船橋に縁のない方で、この作品を観終わった方には、
もれなく「あれ、本当に普通にあるのよ」と教えてあげたいくらい。

気になる存在がそこにあったら、観てみる。
それはなんだか今年の観劇テーマのような気がしている。
赤堀さんの、異常にデカイ声を聞いて、それを確信した。



キッチンで使う角ザルに入れてみた。
目のチカチカが増して、嫌~な気持ちになる。作品へのリスペクトだったりする。


<公演日程>
2016年2月5日(金)~2月21日(日)
シアタートラム

2016年2月24日(水)~2月25日(木)
まつもと市民芸術館 実験劇場

2016年2月27日(土)~2月28日(日)
水戸芸術館 ACM劇場

2016年3月1日(火)~3月2日(水)
愛知県産業労働センター ウインクあいち 大ホール

2016年3月4日(金)~3月6日(日)
兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

2016年3月8日(火)~3月9日(水)
JMS明日テールプラザ 中ホール

2016年3月12日(土)~3月13日(日)
福岡県立ももち文化センター 大ホール