「あれから、15年。(41)」
「今からあたしが言う事は誰にも教えないで。
あんただけに話すんだから。
アリスにも喋っちゃダメよ。
あんたがアリスと仲良くしてんの、あたし、本当はあんまり気に入らないし。」
「う、うん」
RINAは紙とペンを出し、住所と地図を書いて行く。
「ここはね、とても良心的な金額で、腕が良い縫製アトリエなの。
着数も1型×10着から縫ってくれるわ。
枚数少ないからって料金も上がらないの。
あたしがね、何年も掛けて探したアトリエ。
だから、絶対に誰にも教えないで。
Villageのデザイナー達にバレて、たくさん行くと金額が上がるかも知れないわ。
このアトリエとの付き合いはあたしの財産のひとつなの。
GO、あんたにしか紹介しない。
アリスにも絶対に言わないで。」
オレは絶対に口外しない事を約束した。
あれ…
なんか、デジャブ…
日本でも同じ様な事が一度あった。
空前のインディーズブランドブームの頃、
凄く良くしてくれる先輩の女性デザイナーさん。
RINAみたいに、自分の財産である縫製工場や、生地問屋を紹介してくれたんだ。
デザイナーにとって、それがどれだけ大切な事か、オレ身に染みて解る。
だから、この恩は一生忘れない。
そして絶対に誰にも口外しない!
日本で、ライバルデザイナーのオレに、優しくして下さった先輩。
そして、海を渡ってこのNYで同じVillageで店をしているライバルに、こんなに優しくしてくれるなんて…
日本と、そしてNYでオレを助けてくれた、この二人の事を
縫製工場を紹介してくれた事を、
歳月がいくら流れても、決して忘れる事はない。
忘れ様がないよ。
RINAがオレが行く事を、アトリエに電話してくれた。
「GO、今すぐ行きなさい!」
そしてオレはAKIUE-GOに戻ってチャリンコを置いて、ちょっと出掛けて来ると伝えた。
何かしらの臭いを嗅ぎつけたディレクターFさん。
すかさず、カメラの準備をしてオレに帯同する。
テレビマンの勘だね。
隣のアリスに会ったら、オレきっと挙動不審になっちゃうから、急ごう!
Swallowのサンプルと、RINAが書いてくれた住所と地図を握りしめて
ディレクターさんが一緒なのでこの日はCAB、タクシーに乗り込んだ☆
「Can you take me to 7th avenue?」
「All light!」
「GO to 7th Avenue!」
目指すは7番街!
別名、ファッションアベニューへ急ぐぞ!
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