福岡県東峰村に住んでほぼ5年、それまでの14年間の全国行脚の成果を生かして村の活性化に貢献したい気持ち一筋でやってきました。そして昨日大きな転換点がきました。

 いわゆる発達障害児だった28歳のひろつぐ君は祖父母と両親の5人暮らしで日本棚田百選の竹地区のど真ん中に住んでいます。ご両親は仕事に出ておられるので、米作りははじいちゃんばあちゃんに教えてもらいながらのひろつぐ君の仕事です。しかし、じいちゃんは今年90歳、ばあちゃんは86歳、すでに農業の現役を離れ、足腰も弱くなりいよいよ目の前に広がる棚田はひろつぐ君に託すしかない状況です。しかも周りのお宅でもほぼ高齢者ばかりですからいよいよ棚田全体を守るのはひろつぐ君にかかってきています。

 ところがひろつぐ君は今でも医者に通い、時には安定剤を飲みながらの生活で朝はなかなか起き上がれない時が多いのです。元気な若者ならまだしもさらにそういうハンディをかかえていました。わたしは3年前にどうするかの答えを見出し、まずはひろつぐ君を東峰テレビスタッフにすることをご家族に提案しました。しかし、彼は家族以外の集まりでは「病気が出ると迷惑をかける」という意識も働いて緊張感で1時間以上は一緒にいられません。しかし、わたしとなら平気です。なので彼の状態を見て村民スタッフとの集まりに徐々に慣れてもらっていつかは番組にも出てもらうという夢を共有しました。

 確かに集団でいることに長続きはしませんでしたが、2年目には初めて家を離れて福岡、熊本の2泊研修に強引に連れて行きました。ご家族は全員が必ず迷惑をかけるということで反対でしたが、わたしが責任持って無事に帰すということで連れて行きました。見事に楽しい2泊3日の研修を達成しました。そして半信半疑でスタッフになって約3年経った昨日、最近悩んでいるのはよく知っていましたが逆に厳しくしていました。朝から伝えたいことがあるというひろつぐ君の話を聞いて1日で彼の構想、夢をわたしの漫画で一枚の絵にしました。一見夢のような話ですが、このような実践のスタートをどこで切るか?、のタイミングを計ってきたわたしにとって昨日の彼の話ぶりはいよいよ彼自身の内から湧いた清水のごとく渾々と湧き上がるのをすぐ側で感じ取りました。

 そして夜、地方創生番組 ふらっと!!東峰(あさくら)の企画会議で彼が実現したい構想を番組化する企画発表の場がありました。するとたまたま勘違いしてお父さんが迎えに来てしまったので!? そのまま参加してもらいました。企画会議では梶原家の居間にいるように父と息子の普段の会話が続き、わたしもバシバシ突っ込みます。30分以上3人で語り合い、とうとうお父さんもひろつぐ君の気持ちを理解できたようです。・・・、こうやって3年越しのひろつぐ応援プロジェクトはいきなり旗揚げする空気になってきました。・・つづく。

*棚田消滅NO!! ひろつぐの志。 は7/18(土)14:20から ふらっと!!あさくら(東峰)で放送されます。とうほうTVホームページで。


 今年の1月5日からスタートしたNHK大河ドラマ追走番組「花燃ゆで國創り」。順調に全50回の半分を過ぎました。

 当初は山口県萩市か山口市に住居を構え山口から追走する予定でしたが、地元あさくら広域での新番組「ふらっと!!あさくら」が予想外に良い形で始まることになり、ちょっと外に出ることが難しくなりました。萩市、山口市に家を本気で探していましたが今は通うことも難しい状況です。

 この番組はわたしの会社である(株)プリズムが完全ボランティア番組として運営しています。しかし、山口へ行っていたらそれはそれで最低限の制作費は賄いながらすすめる予定でした。現在は東峰村を基地として「ふらっと☆Nippon」の1コーナーとしてやっているので経費はあまりかけず「追走」の意味はだんだん文芸批評のような体をなしています。つまり大河ドラマを「地域活性化に生かす」ためにドラマの人物そのものの当事者となった気持ちで前向きに積極的に批評する手法です。

 ちなみに昨日7/4(土)は大河ドラマは「夫の約束」というテーマでしたが、我がほうは「直球!!玄瑞」と題して真っ直ぐしか生きれなかった久坂玄瑞の生き方について自分たちの暮らしの視点からどう考えるか?という語り合いの場にしていきました。そして最近重宝してるのが自筆(自ペン?)の「花燃ゆ追走」漫画です。

 テーマを一コマ漫画にしてこれを肴にみんなで語り合う。著作権問題をクリアすることからはじめた技です。ホワイトボード漫画の誕生です。これがなかなか面白い!! 文章で書くと長々となってしまい、VTRでは更に長い話を漫画は一コマで表せるのです。といってもメディアの特性を生かしあう発想ですのでこれもあり、文字フリップもあり、ホームページ、動画もありという総合的な表現方法でやっています。

 「花燃ゆ」追走番組はそろそろ再び萩市や山口へ向かいます。そして防府市や群馬を目指します。各地放浪漫画も生まれそうな予感ですが、この漫画のミソはホワイトボードに描くということです。その意味や秘訣はまた!!

「花燃ゆで國創り」Youtubeはこちらから
「花燃ゆで國創り」番組配信はこちらから
「花燃ゆで國創り」FBページはこちら
岸本晃FBページはこちら 


 東峰村宝珠山地区の農産物や特産品を年に3回贈ってもらえる宝珠山ふるさと会員になりました。東峰テレビで全国にお勧めし、約30名にも会員になってもらいました。

 そしてここのところ全国の皆さんから続々とお便りがが届き、いかに宝珠山の農産物が新鮮で手応えがあるか、特産品が優れているかをあらためて知りました。で、昨日は徹夜明けで夕方から少し眠ったので、シンデレラタイムからまた目が覚めてしまってさきほど厨房でごそごそやっていました。味噌汁はいつもいりこ、昆布、鰹節から出汁をとって作りますが、今日はそれに加えてふるさと便のジャガイモ、玉ねぎ、そして手元にあった大根を入れ、岩屋みそで仕上げました。

 なるほど東京の知り合いの子どもさんが岩屋みそが一番美味しいと言って食べてるとか、熊本でも評判という話があらためてわかりました。しかもこのど田舎の逸品のデザインがまたそそります。都会や田舎的な雰囲気を匂わせた中途半端な地方都市のデザインされた商品とは違ってもともとしっかりと地元で売ってきた地元独自ならではの絵や文字が中身をしっかりと表しています。

 昨日の「花燃ゆ」追走で久坂玄瑞の直球人生について語り合いましたが、ど田舎の直球で投げ込まれる食の直球味は文句なしに美味しい!!です。売るということを考えていますが、これはもう売れないわけがありません。新たなテレビショッピングの開発に取り組みはじめたところですが、村の特産品や昔ながらの農産物、高取焼や小石原焼も知ってもらえば売れるという単純な戦略を直球でやることだと感じます。

 新聞配達のバイクの音が遠くから響いてきました。そろそろ夜明けです。


 東峰村ふるさと便の会員募集(ふるさと宝珠山の会・会員募集)をしています。今回の募集は東峰村の旧宝珠山村地区の農産物や加工品を年に3回お送りするもので、詳しくはとうほうTVのホームページのTOPページに上記の静止画を貼り付け1分動画やPDFで見れるようになっていますのでご覧いただければありがたいです。

 今のところ、たいへん人の良い村の農家の皆さんがご自分たちが丹精込めて作られた新鮮野菜や加工品をどっさりお送りするものですが、とうほうTVでは

1、古代から修験道の里として知られる宝珠山の土地と文化の紹介。

2、その中でも547年に宝珠石(隕石?)が空から降ってきたと伝えられ、ご神体となって今も祀られている岩屋神社などに数多く残る伝説、伝承。

3、今でも頻繁に庚申さまやお大師さまなど、昔から伝わる小さな村祭りがあってしょっちゅう村人が寄り合っている暮らしぶり。

4、親の背中を見て明るく素直ですくすくと育っている子ども達と親達の温もりのあるコミュニティ。

5、ほとんどの高齢者がいつまでも田んぼや畑、草取りや川そうじなどをして昔ながらの共同体の中で元気に暮らしている姿。

6、そしてとうほうTVや東峰ムラガールズなどよそ者と地元の人との連携で起こってきている新しい潮流。

 ・・・などをお伝えしていきます。ふるさと便が生まれた背景や滋味溢れる土地の力、古代より湧き出でる地下水、村人の温かい人柄、そして消滅すると言われている人口2,300人の小さな村の未来の繁栄を創造する新しい人のネットワークを草莽崛起*1(そうもうくっき)人脈と名付けます。

 吉田松陰の志を受け継いだ萩の松下村塾の塾生達があそこから日本を変えたように、東峰村はここから新しい未来を創造し発信していきます。今回は東峰村ふるさと便運営委員会の宝珠の会 会員募集のお手伝いをさせていただく立場ですが、とうほうTVとしてはこれまですすめてきた構想を具体化する一歩としてこの宝珠の会会員募集事業のサポートをさせていただきます。

 ご協力いただいた皆さまには東峰村を故郷の一つとして愛していただけるような人間同士、家族同士の付き合いなど昔から日本社会の基本である息の永いお付き合いをしていただけるような企画や事業を東峰テレビからご提案していきます。ご協力よろしくお願い致します。

 お問い合わせ、お申し込みはとうほうTVホームページTOPページのからお入りください。電話やFAXをご希望の方は下記から。
0946-23-9107 東峰テレビ局
0946-74-2121  FAX 0946-74-2284 東峰村商工会 まで
とうほうTVホームページ 

:1草莽崛起(そうもうくっき)草むらに潜む隠者という意味で、在野の人たちこそ変革を担う原動力になるべきとの意味。
              とうほうTVでは現在NHK大河ドラマ「花燃ゆ」の追走番組でたびたび紹介している。 


 京の芸者、辰路の志について今日の「花燃ゆ」追走番組で語れなかったので少し。

 辰路は京の裏情報提供をほのめかして久坂玄瑞に近づきます。玄瑞はすでに描かれてるように無骨で一徹で辰路のような花街の現場で百戦錬磨の磨き抜かれた女性にとっては赤子のようなものでしょう。そして後半明らかになりますが、やはり辰路には彼氏ががいて玄瑞に近づいたのも惚れた彼氏への貢献のためでした。

  玄瑞は旦那になってくれるように頼まれ、しかも公家衆を口説き落とすためにすでに辰路の情報に頼っています。辰路は抜け目なく言い放ちました。「高くつきますえー」。純朴で一徹な玄瑞には意味はわかりません。・・・。ここで再び志です。「松陰、復活!」というこの回ではいろんな人の中に生き続けた松陰の志を時代がぐいぐい引っ張りだしていきます。高杉晋作が「にっぽんをひっくり返すんぞー」と言ってイギリス公使館焼き討ち計画に参加しない玄瑞を一喝して「お前無しでできるかー、来いよ」と男同士の最大の口説き文句を放ちます。そして気になるのが辰路です。

 幕末の志士の力になって自分もこの世に何かしでかしたという証拠を残したい一心でもあります。ドラマの先は全く知りませんが当然、辰路も恋に落ちるでしょう、玄瑞に。実際に玄瑞の子供を産むらしいですが、ドラマになるということもありますがこの二人の恋が成立するのもやはり「松陰の志」の復活だったというシナリオの目論見を感じます。しかし当時ですから女の志は男への貢献ということでしか難しかったので最終的には誰を選ぶか?が辰路にとっては最大の関心であったでしょう。そして玄瑞に向かうのです!!

 多くの塾生が松陰から志を学んだんですが玄瑞には松陰から学ばなくとも生まれつき持っていたものがありました。「純粋な気持ち」です。これは彼がドラマに登場してから一貫していてぶれていません。文も兄松陰に似たものを感じ取ったからこそ惚れ込んで、結婚したのでは?ともおもわれます。志=純粋な気持ちというラインは意外と多くの志士たちの中でも徹し切れないことでした。どこかでぶれる。そしてぶれない志は百戦錬磨で磨き上げてきた芸妓辰路にもずっとあったので遂には似た者同士が結ばれていきます。

 ・・・、というのもあくまで岸本説です。高須久子と松陰の牢獄の出会いとは対照的に大変賑やかで一見派手な花街での純粋な魂の出会い。ドラマとは面白いものです。

*「花燃ゆ」追走番組はとうほうTVホームページで。 


 「軍師官兵衛」では現在の伊丹の有岡城に1年間という幽閉を余儀なくされた官兵衛でしたが、栗山善助、井上九郎右衛門、母里太兵衛の家臣3人を中心に一切の揺らぎもなくひたすら官兵衛救出に賭けた黒田家中の結束力は「信頼」という一言が全てでした。

 そして官兵衛は牢獄のかすかな開き窓から藤の花の美しさを見つけ、生きる希望を取り戻しました。奇しくもこの1、2週間は藤の花が最も美しい時でした。官兵衛ほどの劣悪な状況の牢獄ではなかったにせよ野山獄や自宅での長い幽閉生活が続いた松陰への家族や松下村塾の塾生たちの信頼は一旦揺らぎはしましたが、死をもって志を貫いた松陰の意志は揺らぎを超えて塾生にとどまらず幕末の多くの志士に伝播していき、ついには新しい夜明けを導きました。井伊大老でさえ実はその同志であったと思わせるほどの幕末・維新の大叙事詩がこの日本で繰り広げられました。

 そして信長、秀吉、家康のもとで働いた官兵衛、松陰の周辺で働いた文や小田村伊之助、塾生たち、・・・、武士だけではなく医者や魚屋さん、おんなたちもねじり鉢巻をして一致団結して事に当たった時代がありました。遂には「草莽崛起(そうもうくっき)」という難しい言葉で表現された「ふつうの在野の有志」、今でいうと「ごく普通の暮らしをしている民間人の志をもった老若男女全員」が立ち上がり世の中を変えていくことの必要性を松陰は唱えていました。

 あれから160年あまり経ちその時代の到来を感じさせる風がじわりじわりと吹いて来ています。わたしたちは何かと批判の多い大河ドラマを追走しつつ官兵衛と松陰、その周りで生きた人たちに2年続きで学んでいます。ドラマはフィクションと再々話してきましたが、そのフィクションから伝わる人の生き方や人としてのあり方は十分すぎるほど学べる機会になっています。官兵衛の大義や松陰の志をごく普通のわたしたちがごくありきたりの日常に活かせる時代にいます。官兵衛、松陰が生きた時代には当然ですが電話もメールもありません、どうやって官兵衛が生きてること、松陰が志を曲げていないことが伝わっていったのでしょう?信長は官兵衛を疑い、長男の長政を殺せと命じました。しかし、竹中半兵衛らが守りました。この半兵衛の決断は官兵衛が裏切ってなかったことを後に知った信長を救うことにもなりました。「信頼」という二文字が全てを決定付けました。

 これら官兵衛、半兵衛、松陰の生きた歴史が今につながっていることを自分自身で気づくことが一人一人の本当の歴史でしょう。その一人一人の人間に中心を置いた人間歴史の集大成が歴史絵巻といわれる大河ドラマに通じる大叙事詩になっていると感じます。大河ドラマを見ることは毎週、「あなたの志は何ですか?」と松陰先生に問われることになっています。この面倒しいことに正面切って当たるならきっと大河ドラマはとても面白くためになるドラマとしてあなた自身の裡に蘇るでしょう。

*大河ドラマ追走番組はとうほうTVホームページで 


 花燃ゆ第17回「松陰最後の言葉」を今朝見ました、当日は見れなかったので。前原一誠と井伊大老、そして牢名主に注目していました。

 前原一誠は松陰の計画を告げ口したことへの引け目が大きな傷となっていて松陰が江戸送りとなった後はなかなか松下村塾へは顔を出せません。しかし文の心遣いで徐々に塾に戻れるようになり、志を同じうする者が顔を合わせることが力になっていくことを悟ります。文による塾の再生は「一人では弱い」ことを松陰の件で思い知った塾生たちの共通の悩みであり光であったのです。現代の私たちがネットで毎夜つながりをもっているのはこの精神にも繋がってるんではないでしょうか?

 井伊大老はついにお白州の場に身を隠しながら松陰の言葉を直に聞きます。きっと己の迷い、つまり本当に条約締結したことが良かったのか、やはり攘夷すべきだったのか?この迷いに直言してくれる存在は今は国広しといえども松陰しかいなかったのです。体面があって幕府の座敷には呼べない松陰が座るお白州に自ら身体を運びます。井伊大老もまた迷える子羊だったのです。

 そして松陰の直言に思わずお白州に姿を現してしまいます。正直で真面目な井伊大老が見事に描かれています。しかもそこで松陰と論争してしまいます、かつ敗れます。松陰の視線は牢番に身体を引きづり戻されながらもキリッと井伊大老から視線を外さず下がります。牢名主の松陰へのアドバイス、「裁き人の褒め言葉に注意しろ」を松陰は逆手にとって挑発し井伊大老をおびき出し、怒らせます。そして人生最大のステージで自分を見事に描き切りました!!

 その夜、井伊は遠島と書いた文字の上に紙を貼り、死罪と書きます。いい大老こそ松陰の死を最も惜しんだ人でしょう。周りには誰もあそこまで自分を諌める人はいない。唯一の友とも呼ぶべき松陰を自分が殺さざるを得なかった苦悩はいかばかりか?? 今回の大河ドラマもまた実によく書けていると感じました。人物がしっかりと浮き出ています。

 最後に牢名主、獄の世界ではツルといわれ、金のことですが牢獄社会ではツルが全てを決めます。松陰も例外ではありません。いよいよ死罪のお沙汰があってから松陰はこの牢名主に家族や同志に書き綴った遺書を託します。しかし、すでにツルは一銭も残ってません。牢名主は問います。「で、ツルは?」「もうありません」「でもあなたを信じて託すしかないんです」と松陰はこの人にも視線を外さず、しっかりと見つめて話します。生涯一人の友も持てなかった牢名主の表情が変わったのはもちろんです。・・・。

 「花燃ゆ」はシナリオも演出も毎回充実してきています。きっと視聴率はさらに落ちるんでしょう!! ^^ いいドラマは見られない。前回書いたように当事者として追体験できるかどうかが要です。わたしには「花燃ゆ」は毎回見所が多すぎて見過ごせません。

「花燃ゆ」追走番組はとうほうTVホームページで 


 第17回「花燃ゆ」追走番組は女囚高須久子に注目します。

 江戸送りの前日に牢番の計らいで家族と過ごした松陰が野山獄に戻り久子に弱音を吐きます。「大丈夫じゃろか?最期まで私は私でいられるじゃろか?」久子は牢の外に座っていてそっと手を差し伸べ松陰の手に触れて言います。「人とはこれでございます」。

 大河ドラマを見てない人のために書きますが、「これ」というのは松陰の手の甲にそっと触れた久子の手をいいます。つまり「人とはこの温もりです、体温です」、といってるとわたしはドラマを見ていて感じました。しかも女と男が触れる温もりです。この瞬間、松陰の目は少年のような驚きを表してます。いい演出です。

 学問一筋、しかも実践することにひたすら生きてきた松陰は彼女のいないまま最期の時までひたすら志を実現する時を追い続けた人でしょう。その松陰と対照的に「人とはこれでございます」と死に向かう男にさりげなく男女の色恋こそ人の本来の姿ですよ、と手の温もりで諭すようにやさしく送る久子、志と色恋がひとつになる瞬間です。

 死に向かう松陰にとってはすでに何万遍のありがたい言葉や、学問、哲学よりも久子の手の温もりが江戸送り、井伊大老との対決などの時の志を支えたであろうことは十分想像できます。毎回言ってますが、自分が松陰の立場であれば・・・、もっと不安に苛まれるでしょう!!?その時久子のような女性が「人とはこれでございます」とそっと手を置いてくれたら・・・、さて?あなたはどうしますか?

 今回の「花燃ゆ」追走番組は久子の色恋人生哲学に迫りたいとおもいます。

*「花燃ゆ」追走番組の放送はこちら



 松陰(伊勢谷友介)の弟敏三郎はろうあ者です、兄松陰の志を最も受け継ぐ気概があっても周りのみんなに伝えられない苦しさを抱えていました。安政の大獄が始まり、松下村塾も閉鎖され、幕府の弾圧が強まる中で松陰は老中暗殺という奇策に出ます。しかし高杉晋作、久坂玄瑞をはじめ塾生たちの誰一人も立ち上りません。

 松陰は業を煮やし、死ぬことで志を伝える以外に道はないと悟ります。その兄がつながれている牢獄に弟敏三郎が訪れます。「自分がやる」、手話で、表情で、これを伝えに来たのです。誰よりも兄を尊敬し、誰よりも兄の志を受け継ぐ敏三郎の必死の願いに松陰はNoと言います。勝手に出て行こうとする敏三郎を牢番に止めるように頼みます。・・・。

 さて今回わたしが最も注目したのはここです。ドラマのシナリオ、演出スタッフはドラマゆえにか?「ありえない松陰」を描いてしまったと感じました。松陰は弟子たちに老中暗殺を命じる立場です。揺らぐ塾生、その現場を知る文(井上真央)が兄をなじります、小田村伊之助(大沢たかお)も「お前は先生(と呼ばれる)に値せん」と糾弾します。が、松陰は「彼らは志を共にする同志なので覚悟はできている」と一蹴します。

 その松陰が塾生でもある弟敏三郎が自らの意志で決行しようとしたら、無理やり行かせないように止めてしまい、弟の生命を守ろうとするのはどう考えても矛盾します。他人の塾生たちは「死ぬのも覚悟の上」、と言い、自分の弟は特別扱いで守るでは志とは言えません。塾生たちに何の申し開きもできませんからこういうことを松陰がするわけがないとわたしはおもいます。

 ドラマは元々がフィクションなので弟が兄の代わりに決行しようとする、というシーンが大河ドラマ用に作り出されても勿論いいと思ってます。しかし、筋が通るようにしていかないと今後のシナリオに、松陰の行動原理に大きく影響します。わたしはいつも自分がその立場なら・・?と考えながら、当事者として大河ドラマを生きてますが、どうしてもこのシーンは解せません。これまでのドラマの流れで描かれた志をもって、誠をもって、日本を変えようと行動する松陰なら、塾生に生命を賭けて志を遂げることを一貫して伝えている姿からすると弟にも「わかった、よし行け」というしかないはずです。

 追走しておられる皆様はこのシーンをどう見られたでしょう?

*「花燃ゆ」追走番組(
16)は 4/18(土)13:50-14:05 とうほうTVの新番組「ふらっと☆日本」でお伝えします。
*放送は とうほうTVホームページ  情報は「花燃ゆ」追走 Facebookページ    ふらっと☆Nippon Facebookページ で。


 その時あなたは?

 昨年の「軍師官兵衛」から常に問い続けられていると感じるこの言葉。「花燃ゆ」追走番組では初回よりずっと松陰先生から突きつけられていますね。第14回「さらば青春」では遂に安政の大獄がはじまり、松陰先生は老中暗殺を計画しますが、その時、文のおにぎりを食しながら勉強してきた塾生は突然、本当に命をかける時を迎えました。

 老中暗殺の血判書に署名を迫られますが、その時わたしは?そしてあなたは?家族は?あなたの彼女は?・・・、その中で江戸から帰った吉田稔麿は迷います、悩みます。そしてついに・・・。ドラマなので一方の松陰先生は再び野山獄に連行されるその時に稔麿の自宅に会いに行きますが、門前払いのように追い返されます。

 文はこの計画を塾で密かに聞いてしまい家族に密告?!しました。さて、あなたは松陰か?文か?稔麿か?・・・、昨年の官兵衛では常に相手を殺す側にいて「その時あなたは?」を問い続けられました。そこで調略、話し合いでなんとか命を奪わずに切り抜けていく官兵衛の軍師としての能力にある種、救われつつも「最終ランナー家康」と戦いの世を終わらせていくのでした。その大河を追走する1年でした。

 今回は次々と殺られていく立場で追走です。しんどいですが常に当事者としてフィクションにも関わることで現在の自分が磨かれます。松陰先生の思想、実践がその後の平和を築きますが、最近、大刀洗平和記念館にて特攻で亡くなっていったり、空襲で亡くなった子どもたちのことをあらためて深く接し、またまた戦後70年の今と深くつながってきました。

 それは次に別途書きますが、今日の「花燃ゆ」追走は「その時あなたは?松下村塾閉鎖」です。

*放送はとうほうTVホームページから