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文在寅大統領が反日を象徴する式典で「日本が対話と協力の道に出てくるならば、われわれは喜んで手を握るだろう」と、上から目線の懇願をした。しかし、安倍総理が何の反応も示していないのを筆頭にわが政府の対応はクールだ。
世耕経産相は文大統領が演説した同じ日の記者会見で韓国の日本優遇国除外について、「日本経済に与える影響は少ない」「WTOへの提訴はどうするのか聞いてみたい気持ちだ」などと述べた。「(現段階で)協議はあり得ない」とも述べて大統領の願いを一蹴した。
会見では大統領の演説内容には誰も触れていないから、この発言はそれを踏まえたものではない。しかし、大統領が何を言おうが、具体的な是正措置を提案してくるまで、この件についての協議など有りえないのだ。
また、河野外相は外遊先のセルビアで「ムン大統領には国際法違反の状況を是正するリーダーシップを取ってほしい」と述べ、徴用工問題で是正措置をとるように求めた。
言うだけではなく具体的に動けと突き放した形だ。
そして、この件については韓国側の提案次第では外相会談も含む対話の可能性に触れながら、輸出管理に関することは「経産省の実務レベルで情報提供をお願いしている」とそっけない。
これは外交案件ではなく、あくまでも日本の輸出管理の問題だと切り離しているのである。
一方、文大統領の演説に「一時期の発言に比べると非常に穏やかになっている」と一定の評価を与えたのが岩屋防衛相だ。また、「連携すべき事柄についてはしっかり連携したい」などと防衛協力の重要性を強調したから、これに反発する人は結構多い。
しかも、商売保守の評論家ならともかく、佐藤正久氏までツイッターでこの発言を批判した。
現職の外務副大臣が報道を引用して防衛大臣を批判したのである。
佐藤まさひさ@SatoMasahisa
【岩屋防衛相「一時期に比べ穏やか」韓国大統領演説】
上っ面だけ見てもダメ、本丸の旧朝鮮半島出身者問題や慰安婦財団の解散等、二国間条約や政府間の約束を守ることには何も言及していない。
また、隊員の命に関わるレーダー照射問題も棚ざらしのまま。これを解決しないと
https://twitter.com/SatoMasahisa/status/1161943673912696833
記者会見での実際のやり取りは次のようなものだ。
Q:日韓に関連してなのですが、今日の午前中に、韓国の文在寅大統領が、「光復節」の式典において、日本が対話と協力の道に進むのならば、我々は喜んで手を繋ぐといった演説をして、日本への批判のトーンを抑えて対話による解決を呼び掛けたところなのですが、それについての大臣の受け止めをお願いします。
A:私も演説内容を拝見しました。私から文在寅大統領の演説について、直接コメントすることは控えたいと思いますが、一時期の御発言に比べますと、非常にモデレートされた形になってきていると感じた次第でございます。いずれにしても、北朝鮮の特にミサイルの問題をはじめ、安全保障の面においては、今後とも日韓・日米韓の防衛協力が極めて重要な時に差し掛かってきておりますので、日韓の防衛当局間で連携すべき事柄については、しっかりと連携をしていきたいと考えております。
岩屋大臣が一番言いたかったのは「北朝鮮のミサイル問題をはじめ日韓や日米韓の防衛協力が重要なときに差し掛かってきている」などの後半部分だろう。
だから、文大統領の演説に対しては敢えて「上っ面だけの感想」を述べた。
北との駆け引きが激しくなっているこの時期に、他の要因で防衛協力を棄損するようなことが有ってはならない。そのため、政府は防衛政策を貿易管理の問題と条約や政府間の約束を守ることを切り離して対応してきた。
レーダー照射をするような韓国軍を信頼できないのは当然だが、いまの段階で他の問題と同じ時期に取り上げることは韓国の用意した土俵に乗ってしまうことになる。
打つ手がなく困っている相手にネタを提供する必要などまったくないのである。
この場で防衛大臣が文大統領の演説に批判的なことを述べたり、ましてやレーダー照射問題に言及するのはマスコミと韓国に燃料を提供するようなものだ。
だから、佐藤副大臣のツイートを見て味方を後ろから撃つ行為に思えた。
外務副大臣が防衛大臣をツイッターで批判するのは異例で、保守派に人気の佐藤氏が支持者受けを狙ったと感じたのだ。言いたいことがあれば直接言えばいいのにと。
ただ、少し落ち着いて考えると、これはそれぞれの役割分担なのだと思えてきた。
経済や外交で問題があっても防衛体制は維持することを求められる。
そんな立場の防衛省にかわって佐藤氏が元自衛官としてレーダー照射問題に言及したと。
佐藤氏は「本丸の旧朝鮮半島出身者問題や慰安婦財団の解散等、二国間条約や政府間の約束を守ることには何も言及していない」と述べている。これも、岩屋防衛相を批判するように見えて、実は外務省のスタンスが変わらないとのメッセージを韓国政府に送ったのではないか。
外務省は通産省と同じくボールは韓国側にあるとのスタンスなのだ。
徴用工も慰安婦も二国間条約や政府間の約束を守るかどうかの問題であって、国内問題である輸出管理はもちろん、対北朝鮮防衛協力とも切り離しているのである。
だから、河野氏も佐藤氏も輸出管理の話はしていないし、岩屋氏は外交に関することも一切言っていない。大統領演説を「言うことは前よりまとも」と評たくらいで、わが国の対韓政策に影響などあるはずがないのだ。
この件についてさらにクールなのが安倍総理だ。
8月6日に「最大の問題は、国家間の約束を守るかどうかという信頼の問題だ」、「日韓請求権協定をはじめ、国と国との関係の根本にかかわる約束を、きちんと守ってほしい」などと述べて以降、この件について発言していない。
ボールは韓国側にあるとのスタンスは全く変わっておらず、文大統領が口で何を言おうが、安倍総理以下政府の対応がブレることはないのである。
こういう対応を「丁寧な無視」と言うのだと思う。
(以上)
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