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長らく不在だった日本出身横綱がやっと誕生することになり日本中が沸いている。テレビでは相撲を盛り上げているモンゴル出身の横綱に敬意を表しつつ、日本人横綱の誕生を素直に喜ぶ声が多かったが、この「街の声」には大いに賛同したい。
いつもはどこの国の新聞か分からない毎日新聞も、「人」欄や「余禄」で取り上げているほか、「19年ぶり日本出身」となどと好意的に報じている。
大相撲
「横綱・稀勢の里」推薦 19年ぶり日本出身 横審、満場一致
毎日新聞2017年1月24日
大相撲の横綱審議委員会(横審)=守屋秀繁委員長(千葉大名誉教授)=が23日、東京・両国国技館で開かれ、初場所で初優勝を飾った大関・稀勢の里(30)=本名・萩原寛(ゆたか)、茨城県出身、田子ノ浦部屋=を満場一致で横綱に推薦することを決めた。25日の日本相撲協会理事会と春場所番付編成会議を経て、正式に「第72代横綱・稀勢の里」が誕生する。
横審には委員11人のうち8人が出席。審議は10分あまりで終わった。守屋委員長によると、出席できなかった委員からも意見を聞き、全員賛成だったという。
稀勢の里は初場所で横綱・白鵬を破るなど、14勝1敗の好成績で初優勝。日本出身力士の横綱昇進は1998年夏場所後の第66代横綱・若乃花以来となる。【村社拓信】
http://mainichi.jp/articles/20170124/ddm/001/050/159000c
千秋楽の白鳳戦では猛攻受けてやっと逆転したように見えたが、テレビで何度も流れる映像を見ているうちにかなり余裕を残した横綱相撲に思えてきた。多少ひいき目かもしれないが、昨年の年間最多勝になるなど、着実に力を付けてきていることは間違いない。
ご本人も白鳳戦でそれを実感したようで、「本来ならあの相撲で何番も負けている。自分の力以上の力が働いた」と述べている。「ここっ!」という時に思わぬ力が出たというのだ。
日刊スポーツの記事から。
稀勢の里「まだまだ強くなる」横綱昇進一問一答
2017年1月24日9時42分
初場所で初優勝した大関稀勢の里(30=田子ノ浦)の第72代横綱昇進が事実上、決まった。東京・両国国技館で23日に開かれた横綱審議委員会で、満場一致で横綱に推挙された。25日の春場所番付編成会議と臨時理事会で正式に誕生する。
<稀勢の里 一問一答>
-昨夜は
「よく眠れました。午前1時とか、2時とかに」
-14日目の優勝の瞬間
「次は千秋楽だという気持ちで支度部屋にいたので、ちょっとびっくりした。横綱が負けると思わなかったし、信じられないという気持ちの方が大きかった。過剰に喜ぶのも良くないなと、冷静に受け止めた」
-千秋楽の白鵬戦
「本来ならあの相撲で何番も負けている。自分の力以上の力が働いた。あんな残り方は人生でない。先代に俵から何番も取らされたので体が覚えていたのか」
-30歳での横綱昇進
「体も気持ちも元気。まだまだこれから強くなると思っている。これからがスタートだという気持ち」
-先代も30歳で昇進
「成績もまだまだ。優勝回数も追いついていない。1歩1歩、ゆっくりでも近づけるように努力したい」
-優勝1回での昇進
「もっともっと成長していかないといけない、ということだと思っている」
-あらたな夢は
「納得できる相撲を1日でも取れる力士になりたい。そのためには体調管理。この年になると食べ物1つでスタミナは落ちる」
-あこがれの横綱は
「自分は自分しかない。もっともっと自分自身を鍛えていきたい」
(太字強調はブログ主)
http://www.nikkansports.com/battle/sumo/news/1769459.html
まず、この記事の簡潔かつポイントを押さえたまとめ方に感心する。質問内容がたった数文字で、回答も言葉にまったく無駄がない。非常に読みやすく、しかも稀勢の里関の心境や感じていることがしっかりと伝わってくる。
全国紙の経済・政治記者よりスポーツ紙のほうがよほど優秀ではないか。社や上司の方針、関係官庁の意向などを気にして変な角度を付けると、天声人語のような訳の分からない文章になりがちだが、この記事からはそんな邪念はまったく感じられない。
そして、稀勢の里関の短い言葉には、彼が足踏みを繰り返しながらも、ついにここまでこれた秘密が込められているように思う。
例えば、白鳳戦で「自分の力以上の力が働いた」と述べた後に「あんな残り方は人生でない。先代に俵から何番も取らされたので体が覚えていたのか」と続けている。彼には体が覚えているほどけいこを繰り返したとの自負があるのだ。
そして、30歳という比較的遅い昇進や優勝回数についても「まだまだこれから強くなると思っている。これからがスタート」「1歩1歩、ゆっくりでも近づけるように努力」「「もっともっと成長していかないといけない」などの前向きの言葉を繰り返す。
特に「まだまだこれから強くなると思っている」という言葉には単なる強がりではない、自分なりの根拠が感じられる。それは、努力を積み重ねてきたこれまでのやり方は間違っていない、さらに努力を重ねればもっと強くなれるとの確信がこう言わせているのだ。
「納得できる相撲を1日でも取れる力士になりたい」とは、逆に言えば改善の余地が一杯あるということだ。彼はそれを一つずつ改善していけばもっと強くなれると考えているのである。
彼は中学校の卒業文集に次のように書いたそうだ。
「天才は生まれつきです。もうなれません。努力です。努力で天才に勝ちます」
上記の会見の言葉の端々にも、この考え方がにじみ出ている。いったいどんな親に育てられたらこんな考え方の若者に育つのかと思うが、私とほぼ同年代の彼のお父さんの言葉を聞いて納得した。父の貞彦さんは息子さんについて次のように述べたのである。
「足踏みをしてるとか精神的に弱いとかよく言われるんですけど、場所ごとに何かを得て強くなってる。本当に一歩ずつ半歩ずつ前に進んでる」
稀勢の里関が自分の弱点や足りない部分を少しづつ、しかし着実に克服してきていることをちゃんと見ているのだ。テレビを見ていて貞彦さんが「本当に一歩ずつ半歩ずつ前に進んでる」といった時、とても感動してしまった。
まさにほふく前進。「百の言葉より一つの結果」であり、その結果を一つずつ、半分ずつでも積み重ねることで大きな成果につながるのだ。稀勢の里関が「まだまだこれから強くなる」と思えるのは、それを実践してきた自負があるからなのだ。
ぜひ、もっと強くなって、大勢の子供たちの「あこがれの横綱」になってもらいたい。
(以上)