トリクルダウンはあるのかないのか? | 猫の遠ぼえ『次の世代に残したい日本』

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トリクルダウンという言葉には格差拡大のイメージが付きまとうので好きではない。三橋氏などによる新自由主義批判を散々読んできたから、その印象が刷り込まれたのかもしれない。しかし、金融緩和や公共事業を中心とした財政政策が効果を発揮するには、このトリクルダウンを起こす必要がある

安倍政権が盛んに経済団体などに賃上げや投資を働きかけているのも、円安のメリットを享受している輸出企業や景気回復で利益を挙げている企業が従業員や取引先に還元することが経済の好循環につながるからだ。政権のそういう意図を、高村副総裁が例によって分かりやすく解説している。(太字強調はブログ主)


「デフレ脱却でトリクルダウンあり得る」自民・高村氏
朝日新聞 2015年1月14日
 「(豊かな者が富めば貧しい者も滴が落ちるように豊かになるという)トリクルダウンなど無い」というが、それはデフレ時代のことだ。デフレ時代にトリクルダウンがなかったからといってデフレから脱却した暁にもないと速断するのは禁物だ。経営者が「ためる志向」から「稼ぐ志向」になってもらえれば、それだけお金が経済社会を回る。そのことが経済社会全体のトリクルダウンにもつながっていく。格差是正のためにそれだけで良いとはいわないが、デフレからの脱却と緩慢なインフレという状況にすることによってトリクルダウンがある状況にもなってき得る。(自民党本部で記者団に)
http://www.asahi.com/articles/ASH1G4QNPH1GUTFK002.html

この記事は発言の最後のトリクルダウンに触れた部分だけを取り上げているが、高村氏は前段でとかく批判の多い法人税減税の意図などについても解説している。民主党などから格差拡大政策だとの批判を受けている安倍政権の考えかたを、ごく簡潔に述べているので一読をお勧めする。


経営者が貯める思考から稼ぐ志向に(高村正彦副総裁)2015年01月14日
(たむたむの自民党)→http://tamtam.livedoor.biz/archives/52005708.html

高村副総裁はデフレ下ではトリクルダウンは起きにくいと述べているように、経営者がデフレマインドのままではアベノミクスの恩恵が従業員や取引先になかなか回らない。だから、安倍政権は緩慢なインフレという状況を目指しながら、一方では経営者に賃上げや投資を強く働きかけ続けているのである。

さて、そもそもトリクルダウンとはなにか。自己流の定義がお得意の三橋氏によれば次のようになる。但し、これはウィキペディアの解説を要約したようで、自己流ではなさそうだ。


(※)トリクルダウン経済理論:「トリクルダウン(trickle down)=したたり落ちる」の意。大企業や富裕層の支援政策を行うことが経済活動を活性化させることになり、富が低所得層に向かって徐々に流れ落ち、ひいては国民全体の利益となる」とする仮説。主に新自由主義政策などの中で主張される。
(新世紀のビッグブラザーへ『さようなら、トリクルダウン。ようこそ、トリクルアップ』)より


三橋氏が上記の定義を示しているエントリでは「トリクルアップ」という言葉も出てくるが、これはクルーグマンが言っているそうで、定義は不明だ。ただ、主旨が「低所得者や経営の苦しい中小零細企業への支援を充実させて景気に資する」ということなら、アベノミクスでもトリクルアップも起きている。

例えば、「非正規がー」「実質賃金がー」の対象になっている非正規雇用者数の増加は、失業者が職を得たという意味で底辺層への恩恵と言える。失業者が減り、企業が人を雇うのが難しくなって賃金が上昇し正社員が増えることはトリクル・アップと言えるだろう。

アベノミクスを批判する勢力は円安や株高に目を向けてトリクルダウンだと言い、雇用の改善すら格差拡大だと騒ぐが、一方ではトリクルアップとやらも起こっているのである。また、アベノミクスの財政政策はもちろん公共事業ばかりではなく、各年度の補正予算にはトリクルアップに資する項目もいろいろ含まれている。

例えば、先日閣議決定された26年度補正予算では中小向け低利融資制度の創設には1380億円を計上している。これは一例で、これまでの補正予算にもトリクルアップにつながりそうなものがある。そこで、該当しそうな項目と金額を拾い出してみた。

(平成24年度補正予算分)
 ○中小企業・小規模事業者による地域需要の創造(試作開発等支援) 2,076億円
 ○中小企業・小規模事業者の経営支援体制の抜本強化・事業再生促進 465億円
 ○中小企業・小規模事業者の資金繰り支援 2,020億円
 ○新規就農・経営継承総合支援事業 99億円
 ○木材利用ポイント事業 410億円
 ○農林漁業成長産業化ファンドの拡充 100億円

(平成25年度補正予算分)
 ○中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業等 〔1,532億円〕 
 ○リースによる先端設備投資支援 〔50億円〕 (中小企業対象)
 ○創業・ベンチャー支援事業 〔51億円〕
 ○小規模事業者支援パッケージ事業 〔145億円〕 
 ○中小企業・小規模事業者の資金繰り・事業再生支援事業 〔1,363億円〕 
(財務省 平成25年度補正予算の概要)から

(平成26年度補正予算)
 ○中小企業・小規模事業者の資金繰り・事業再生支援事業 〔1,583億円〕
 ○地域住民生活等緊急支援のための交付金(仮称)[地方創生先行型] 〔1,700億円〕
 ○中小企業・小規模事業者人材対策事業 〔60億円〕
 ○ものづくり・商業・サービス革新事業 〔1,020億円〕 (中小企業・小規模事業者等の支援)
 ○小規模事業者支援パッケージ事業 〔252億円〕
 ○ODAを活用した中小企業・地域経済の活性化支援 〔212億円〕

これらは中小零細企業や低所得者に直接届く予算だから、彼らが有効に使うことにより経済に資することになるトリクルアップが期待できる。金額的にこれで十分かどうかは大いに議論があるところだが、補正予算のなかで金額的に最も多いのは公共事業だ。では、公共事業を実施するとトリクルアップが起こるのだろうか?

三橋氏はトリクルダウンを強く批判する一方で「公共事業でデフレ脱却!」を訴えている。ところが、もし公共事業を受注したゼネコンが利益を独り占めしてしまって賃上げや下請け価格への反映、あるいは新たな投資に回さなければその会社の内部留保が増えるだけとなる

つまり、トリクルダウンが起きなければ経済の好循環が起こらない構図は円安株高の恩恵を受ける企業の場合と同じなのだ。建設業であろうが製造業であろうが、金融政策による恩恵は経済に波及しないが公共事業の恩恵だから波及するなどということはないのである。

民間住宅関連はそうでもないかもしれないが、公共事業の恩恵を直接受けている建設業界は消費税の影響をまともに受けている小売、卸売業などと比べてはるかに好調を維持している。恩恵を受けている建設関係の企業も当然、安倍政権の賃上げや投資の要請に応えてもらわなければならない

公共事業による財政出動を行うことはトリクルダウンを期待するということであり、トリクルダウンを批判しながらそれを主張するのはおかしい。それなら、公共事業を否定して弱者向けの対策に振り向けることを主張している民主党の方が筋だけは通っている

三橋氏は今日のエントリでも改めて『インフレだろうがデフレだろうが「トリクルダウン」は起きない」と明言している。しかしそれは、公共事業をやっても下請け、孫請け、そのまた下請と重層的な構造になっている建設業界の裾野にも恩恵が行きわたらないと言っているのと変わらない。

結局、経済成長と公共事業を無理に結び付けようとするからおかしなことになるのであって、やはり、復興や国土強靭化は経済対策とは切り離して考えるべきだと思う。変に絡めると「公共事業=悪」に凝り固まった連中に邪魔されて国土強靭化の推進にかえって影響が出かねない。

トリクルダウンとトリクルアップの一方だけでは効果が表れるまでに時間がかかるし、それで景気回復が遅れれば遅れるほど低所得者が困る。経済政策として金融政策と財政政策のパッケージがより効果的であるように、トリクルダウンもトリクルアップもどちらも必要なのである。

(以上)

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