『正社員=終身雇用』は高度成長期の幻影?!  | 猫の遠ぼえ『次の世代に残したい日本』

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安倍晋三応援ブログです。
やっと明るい未来を語る政治家が総理大臣になりました。しかし、闘いはまだまだこれから。子や孫が希望を持てる国になることを願うおやじです。

大手企業の技術職として大阪万国博覧会の前年に入社したが、面接時に生産現場はいやだと言ったせいで配属先は当時の大卒では珍しく生産現場だった。その後、検査、技術、生産技術を経て自分が設立に関わった子会社の経営に携わり、最後は転職して中国でのモノづくり指導などに関わった。

最後の数年以外は同じ会社に勤めたわけだが、何度かの職種の異動はいい刺激であると同時に精神的な負担も大きかった。しかし、もっと精神的に苦しかったのは、会社の経営が悪化した時のリストラ要員を選ぶ時だ。戦後急成長した会社でも、1980年代以降になるとそういうことが増えてきたのである。

入社以来技術一筋でやってきた部下の中から、サービスや営業などに異動するメンバーを選ぶ。当時は希望退職ではなく社内や子会社への異動だから雇用は守られていたことになるが、ある程度の年齢になった技術者がいきなり営業に異動すればどれほどの精神的なショックや負担があることか。

会社がこういう状況になったのはプラザ合意後の円高の影響が大きかったが、それに対応しようとしてわが社でも東南アジアやその後は中国への生産拠点建設が始まった。日本の製造業全体の空洞化が進み、製造業で働く人の数は減り続けてきた時期だったのだ。

では、その減り続けた製造業の人材はいったいどこに行ってしまったのか。
産業別の勤労者数の推移を確かめてみよう。

注)業種区分は2007~8年にかけて分割または集約されているが、データの連続性を保つため分割分を従来の区分に合計している。
(例)その他サービス業:(医療、福祉)(学術研究、専門・技術サービス業、教育、学習支援業)(複合サービス業)(サービス業)
運輸・エネルギー事業:(運輸業、郵便業)(電気・ガス・熱供給・水道業)(情報通信業


グラフを見ると、全体に勤労者数が増えているなかで「製造業」と「建築業」の減少が目立つ。そして「その他のサービス業」の増加が顕著で「卸売業、小売業、宿泊業、飲食サービス業」も増加傾向だ。
つまり、この間、日本では第二次産業から第三次産業への労働移動が大きく進んできた

海外生産への移行が進んだことやバランスシート不況下での投資の停滞は製造業や建設業の雇用を減少させたが、一方ではさまざまなサービス業が表れてその人材を吸収したのである。そして、その過程で正社員が減り、非正規雇用者の比率は上がり続けた。


その原因を歴代政権の雇用規制の緩和に求めるのは容易だが、背景には経済の停滞と共に社会の変化に伴う産業構造の変化があったことも間違いない。バブルのかなり前から高度経済成長期の「正社員=終身雇用」の図式は怪しくなってきていたのである。

データが見つからないのだが、入社から定年まで一つの会社で勤め上げる人はいったい何%くらいいるのだろうか。私の世代では新卒から定年までを同じ会社の同じ職場で過ごす人も結構いたが、現在は、同じ会社で定年まで勤め上げる人はそれほど多くないのではないか。

さて、安倍政権は成長戦略の一環として、『失業なき労働移動』を打ち出している。これは衰退産業から成長産業への転職を、失業することなくスムーズに行えるようにしたり、非正規雇用の若者の学びなおしを促進してキャリアアップやキャリアチェンジを支援しようとするものだ。

ところが、これを解雇をしやすくする政策だと批判する向きがある。例えば三橋貴明さんは3月22日のエントリ『回答』で、政府が3月から金額を拡充した「労働移動支援助成金(再就職支援奨励金)」を
「リストラ奨励金」だとする週刊ポストの記事を引用して、安倍政権の労働政策を批判している。

新世紀のビッグブラザーへ『回答』

これに対し、「ねこです」さんが次のようにコメントされている。都知事選の時期に陣営の批判をしたという理由で一時的にあくせく禁止になっていたようだが、そのコメントはいつも的確で三橋さんも大いに参考になっているはずだ。

84. 悪禁前科一犯の、ねこだす。
今日の三橋氏もミスリード。

週刊ポストのネタ
>リストラする企業にも、再就職を斡旋する企業にも、それぞれに旨味のあるこの制度。唯一にして最大の問題は、リストラされる労働者だけが、その恩恵に与れないということだ。

↑週刊誌らしい書きっぷりなんだけども、
勤労者にとって、一定期間内の再就職の確率が高まることでの、企業側の恩恵。

再就職出来るのなら勤労者にとって、恩恵だろう。

公務員以外の民間の終身雇用は、10%を切っているのが現実ではなかろうか?
斯様な現実から、再就職の援護をします、という助成制度。
皆、真面目に勤めれば、つつがなく定年退職できます、という現実が既に消滅しているのに、
あたかも、その現実があるかのような前提で、
リストラ促進策の、勤労者首切り促進策、
と捉えるのは、
現実を見てない。

既に、企業はリストラをさんざんやってきている現実に対して、
リストラ社員の再就職率を高めましょう、
という話。

終身雇用が守られている中で、
再就職支援の制度を導入します、という話ではない

三橋氏はこれをネタに使って持論を展開してますが、
↑に書いた通り、前提に誤魔化しがあります。
ねこです 2014-03-22 22:29:54
(引用ここまで)

辛辣ではあるが、実にポイントを付いた指摘だと思う。
ねこですさんはこのコメントのせいか現在再度のアクセス禁止になっているそうだ。ただ、この日のコメントはこれも含めて4つとも残っているので、興味のあるかたはぜひご覧いただきたい。

ねこですさんが言う通り、現状は終身雇用とはとても言えない状況だ。間違った前提の議論は不毛なだけだ。雇用の問題を論ずるのなら、バブルより前から崩壊が始まっていた終身雇用の崩壊や非正規雇用の増加という現実を踏まえるべきである。

何度も書いてきたように、今後の日本の労働力の問題には、人数が不足することだけではなく雇用のミスマッチも大きく関係している。『失業なき労働移動』や『多様な働き方の実現』という政策提言を議論するには、そういう現状を踏まえた前提の共有が欠かせない

雇用環境は長い間に変化を続け、私たちがイメージしてきた『正社員=終身雇用』は高度成長期の幻影となってしまった。その建前と実態の乖離した現実の雇用環境をどう改善し、雇用の安定をどう確保してゆくのかそういう視点で、今後の少子高齢化も見通した新しい雇用制度を目指すべきである。

(以上)

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