最近このブログで消費税を取り上げることが多い。そして、何かというと1997年の橋本内閣の消費増税に言及しているように思うが、橋本元首相自身が後年謝罪をしたように、あの増税と一連の行財政改革はいかにもタイミングが悪く、同じ失敗を絶対に繰り返すべきでないと思うからだ。
ただ、同じことを何度も書いているようにも思うので、過去のエントリを少し見直してみたら、消費税が低所得者への負担割合が特に高いという逆進性の問題について何回も書いている。たしかにこれは大きな問題だが、日本の消費税には他にもいくつもの問題点がある。
そこで、思いつくままにその問題点を列挙してみた。
≪日本の消費税の問題点≫
1.貧乏人ほど負担が大きい逆進性
2.事業が赤字でも納税義務のある実質的な直接税(形式的には間接税)
3.中小零細企業が価格転嫁出来ないケースが多い
4.輸出戻し税などの輸出大企業への優遇・不公平
5.デフレ期に税率を上げるとデフレを促進
6.税率を上げると雇用の抑制が起きる
7.非正規社員の増加をまねく
8.景気のスタビライザー機能がない
他にもあるのかもしれないが、過去のエントリで取り上げてきたのはこの程度だ。
(この記事の最後に、関連エントリのリンクを貼っておいた)
これらの問題点をすべて一気に解決することは難しいが、デフレを脱却し景気が良くなれば自然に解消する問題も多いし、制度を見直すことで改善できる項目もある。
ただ、「8.景気のスタビライザー機能がない」については、景気の変動による税収の増減が少ない(つまり税収弾性値が低い)という特徴の裏返しなので、改善しようとすると税率を景気に合わせて上下させる方法ぐらいしか思いつかない。しかし、それでは何のための消費税かということになる。
ご存知の方が多いとは思うが、ここでちょっと『景気のスタビライザー機能』について説明しておきたい。次のグラフは1997年以降のGDPと税収の推移である。
『その他』のなかには酒税やたばこ税などのメーカーが納税義務者になっている消費税も含まれており、景気の変動による変化は小さい(税収弾性値は小さい)。一方、所得税と法人税、特に法人税は景気の影響を大きく受けている(税収弾性値が大きい)ことが分かる。
税収弾性値の大きい税を納税者の立場で見れば、「景気のいいときにはたくさん納税するが、景気が悪くなって利益が出なくなれば負担も減る」ことになる。好景気時は過剰な投資を防ぐなど景気を冷ます働きをし、不景気時は景気を暖める働きをすることになり、景気のスタビライザーの働きがある。
特に、法人税は事業が赤字のときは免除されるのでその働きは大きいが、赤字でも支払わなければならない消費税は、価格に税を転嫁しにくい中小零細企業にとっては大きな負担となる。だから、消費増税の一方で法人税減税をすることは全体のスタビライザー機能が大きく低下することになる。
さて、今日から国会で増税法案の本格的な審議が始まる。自民党は自党の政策を持ち出して野田首相に抱きつかれるようなことは避け、これらの問題点に対する政府の対応を次々と追及するべきだ。そして、それらへの対応策を教える必要はなく、解散に追い込んでから国民に訴えればいいのだ。
じっくりと野田政権の崩壊を待ち、まずは総選挙で政権を取り戻し、デフレ脱却と経済成長を果たせば消費税の問題の多くは解消する。後は逆進性など制度上で解決できる問題にじっくりと取り組めばいいのである。
(以上)
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≪参考 消費税の問題点と過去の関連エントリ≫
1.貧乏人ほど負担が大きい逆進性 ⇒どう違う?日本の消費税とヨーロッパの付加価値税
増税を許すな!やっぱり特殊な日本の消費税
格差拡大の大きな要因「消費税と税制改正」
【消費税を考える】逆進性を軽減する「軽減税率」
2.事業が赤字でも納税義務のある実質的な直接税 ⇒零細・中小企業を直撃する消費税増税
3.中小零細企業が価格転嫁出来ないケースが多い
4.輸出戻し税などの輸出大企業への優遇・不公平 ⇒経団連が消費税賛成の理由
5.デフレ期に税率を上げるとデフレを促進 ⇒税収は安定しても国民が不幸になる消費税
6.税率を上げると雇用の抑制が起きる ⇒【消費税を考える】消費増税は雇用も抑制してしまう
7.非正規社員の増加をまねく ⇒【消費税を考える】個人事業主は非正規雇用予備軍か?