アホのチャンピオンベルト@千歳リアン | New 天の邪鬼日記

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小説家、画家、ミュージシャンとして活躍するAKIRAの言葉が、君の人生を変える。

6月5日(日)千歳「リアン」
ラーメン「みのり」店主・石崎道祐さんセルフストーリーオペラ
「アホのチャンピオンベルト」
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12日間滞在した北海道ツアー最後を飾るオペラだ。
千歳にある人気ラーメン店「みのり」の大将は、七福神のような笑顔でたくさんの人を幸福に導く。
被災地で1600杯ものラーメンを炊き出ししたり、親に見捨てられた人の葬式を自ら上げてやったり、車椅子の人のホノルルマラソンを手伝ったり、心から他人を喜ばせる「他喜力賞」を受賞して、本にまでなっている。
しかしその人生は想像を絶するような波乱万丈に満ちていた。まるで天国と地獄をエレベーターで行ったり来たりするようなとんでもない人生をセルフストーリーオペラで表現するのだ。これがおもしろくないわけがない。
前日大将があわてた声で電話してくる。
「アキラさん、たいへんです。借りていた会場が工事の為に使えなくなりました。会場側が代わりに結婚式用の教会を使わせてくれるそうですがだいじょうぶですか?」
「おおっ、神よ。そっちのほうがおもしろそうじゃないですか」
「おもしろそうって、演出の打ち合わせが全部変わっちゃいますよ」
「神様のいたずらにつきあって遊んでやると、どんどんおもしろいことを起こしてくれるからだいじょうぶマイフレンド」
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早朝、連日寝不足のオレはジョニー号で岩見沢から札幌に戻り、お世話になった第2の我が家ウィークリーマンションに別れを告げ千歳にむかった。
体力も喉も記憶をつかさどる脳も一人の人間がかかえることのできるキャパをはるかに超えている。それじゃなんで毎回最高のライブができるかって?ひとえに主催者やスタッフがAKIRAライブ迎える日までに費やしてきてくれた熱意や準備のおかげさまなのである。そして来てくれる観客ひとりひとりから膨大なエネルギーをもらっているからだ。

大将とは昨年末札幌でおこなわれた古市さんのセルフストーリーオペラで出会った。
大将は言う。「古市さんには心から感謝しています。AKIRAさんという素晴らしいアーティストと出会わせてくれ本当に幸せです。古市さんがオペラをやると聞いたとき、えー!古市さんって歌も歌っちゃうんだ!とビックリしました。それがまさか自分のオペラをやっちゃう日がくるなんて!古市さんとAKIRAさんのおかげです。ツイテルツイテルー!」
New 天の邪鬼日記-110605ruiruifuruichi仲人役の古市さんとるいるいサンタ

主催者兼主演の大将は大繁盛のラーメン屋をきりもりしながら、震災後は被災地に熱々のラーメンを届け、オレと南米旅行中にやり取りをしながらオペラの脚本をしあげた。中卒の大将にとって心に描いたことを文章におこしていく作業は容易じゃない。そこは作家のオレが大将と対話しながら心の奥底にある核心部を引き出していく。

今日の会場についてびっくらこいた。
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マ、マジでチャペルじゃん!
結婚式場「ベルクラシックリアン」のチャペルの扉をあける。
うおー、これがヴァージンロードか。天井にはまばゆいほどのシャンデリア、ステンドグラスの窓からは優しい光が差し込みチャペルを輝かせている。
雛壇にあがり目の前の十字架に一礼した。
さっすがー、いたずら好きの神様。最高の会場を用意してくれたなあ。
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大将は根っからのエンターテイナーだ。
人を喜ばせること、笑わせること、何より自分が楽しむことを知っている。
大将とドラムのジョニーさんとオレとで2時間リハーサルをおこなった。大将は講演で全国を回っていてもはじめてのオペラだ。緊張しないわけがない。
「大将、悲しいところはあえて明るく読んでください。そして観客に脚本を読んでいると思わせないように、どんどんアドリブやアクションをいれて、自由に表現してください」
オレのアドバイスをまるで水を得た魚のように生かしていく大将の演技力は天才だった。
チャペルには100人を超える人々で埋め尽くされ、オペラの火ぶたは落された。
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本物のリングアナウンサー池守さんの声が響く。
「青コーナー、140パウンド、ワールド放浪チャンピオン、AKIRA-!」
ジョニーさんのドラムロールにのり、後ろのドアからオレが教会の祭壇へオレが一気に駆け上がる。
「赤コーナー、300パウンド、他喜力チャンピオン、石崎道祐―!」
大きな歓声に包まれながらラーメン屋のユニフォームで大将が入場する。
「それでは試合を開始します。アホのチャンピオンベルトー!」
カン、カン、カン、カーン!
るいるいサンタが木槌で勢いよくゴングを鳴らす。
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「PUZZLE」
1、 ミッチーガソリンの孤独「愛を知らない子供たち」
2、 出征の秘密「家族」
3、 自殺とUFO「風のきた道」
4、 結婚と離婚「おさない瞳」
5、 涙のバージンロード「Born to love」
6、 みのりオープン「敗北の歌」
7、 復興支援とのんちゃん乱入「スマイル」
8、 MOVE! MOVE! MOVE!(アンコール)
9、 ありがとう(アンコール)

本番がはじまってからの大将の演技力にオレも驚いた。生き生きした表情と語りでぐんぐん観客を引き込んでいく。
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神様の協力を得たオレの歌はチャペルをふるわし、観客はボロボロ泣きだす。
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感動の物語は進み、大将が決め台詞を言うと、奥さんののんちゃんが乱入し、ハリセンをかます。
「あんた、さっきから聞いてれば、かっこいいことばっか言ってんじゃないわよ。復興支援やらなんだかんだ、あんたがかってに遊びまわってる間、ラーメン屋を切り盛りしてるのはあたしなんだからね!」
もう観客はやんややんやの大喝采だ。
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ハリセンちゃっぷを見舞われながら大将が退散する。
「あたしだって好きなことやらせてもらうわ」
いきなり服を脱いだのんちゃんは、ラメのブラにベリーダンスの衣装を見につけていた。
ジョニーさんのパーカッションに合わせ、のんちゃんが華麗なるベリーダンスを披露する。
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するとチャペルの後方から大将がピエロの衣装を着てあらわれる。風船で花や動物の形を作り、観客にくばる。
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客席に降りたのんちゃんは花を一輪ずつみんなにくばる。
ひとりの老女が客席からステージに上がってくる。
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オペラのなかにも登場する大将の産みの親だった!
お母さんは2歳の大将を捨て、家をでた。今こうやって親子が同じステージにあがり、笑い踊る瞬間を過ごしている。それは奇跡なんかではなく目の前にある真実だということを観客は目の当たりにした。

アンコールで観客は立ち上がり、「MOVE! MOVE! MOVE!」を合唱し、「ありがとう」で手をつなぐ。
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ふたたびリングアナウンサーが叫ぶ。
「アホのチャンピオンベルト贈呈です。プレゼンテーターのんちゃん!」
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のんちゃんが東急ハンズで買ったチャンピオンベルトを高々と掲げ、大将の腰にまき、ほっぺたにチューする。
みんな大喜びの笑顔でオペラの幕は閉じた。

人は計り知れない可能性をもっている。何度だって失敗したっていい。何度だって傷ついたっていい。
人生は気づいた時からいつでもやりなおせる、
「敗者復活戦」なのだから。

大将の友情貯金はすごい!
100人以上もの友人たちが打ち上げにのこってくれた。
New 天の邪鬼日記-110605berydance打ち上げでプロのベリーダンサーとのんちゃんのショー!

またまたサービス残業である。
チョウーハッピーな会場は「なんくるないさ」で踊り狂い、「空の約束」でメディスンサークル(聖なる輪)をつくる。
大人になってからこんなふうに大きな輪になって手をつなぎ歌うことってなかなかないよね~
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大将、愛しています。ありがとう!
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