
10月14日(水)与論中学校 講演会ミニライブ&城(ぐすく)公民館「尊尊我無(とーとぅがなし)」ライブ
昨日は与論島を代表する民謡居酒屋「かりゆし」へいった。
プリシラリゾートでのAKIRAライブにオーナーのテツさん、ボーカルのみやこさんはじめバンドのメンバーがきてくれたし、与論の民謡も聞いてみたい。

テツさんの唄は与論方言でありながら、誰の心にもしみ入る美しく楽しい楽曲だ。テツさんのバンド「かりゆし」は東京はもちろんアメリカへも招待されている。ミチといっしょにインドへいったり、オーストラリアや東南アジアなどを旅したという。
予想通りライブは大盛り上がり!
ミチのお兄ちゃんが踊りだし、知らない観客の手までも引いて、狂喜乱舞の大カチャーシー大会となった。

ライブ終了後はお好み焼きや与論の焼酎「有泉」などを振る舞われ、おもしろい話をいろいろと聞かせてもらった。
テツさんの友人が家を新築した。夜寝ていると壁のほうから、人のざわめくような気配がする。ふと目を開けると壁から足が現われ、自分が寝ているベッドの上にあがってくる。たくさんの足が自分の腹を踏んづけ反対側の壁へと消えていくのだ。べつに胃腸を悪くするとか、なんの危害もないが、わけのわからん者たちに毎晩腹を踏んづけられるのは心地良いものではない。
ユタに相談すると「その場所は昔、村人たちが使っていた通り道だ」ということがわかった。めんどくさがりやの彼はいまだにベッドの位置を変えることなく、毎晩腹を踏んづけられながら寝ているという。
現在滞在中の「ヨロンシーサイドゴルフ」松井館は、バブル期とともに見捨てられた建物である。

使われてない部屋の壁紙は剥がれ、廊下の床は抜け、大家さんの飲み会以外には使われていない。
細長い建物にはたくさんの小部屋がある。自分は真ん中の一部屋しか使っていないので、両側に立ち並ぶ部屋は未知の領域である。
「あー松井館ですか? あそこ……でるんですよね」
テツさんはじめバンドメンバーたちも口をそろえて言う。
真夜中耳をすますと奥の暗闇から物音がする。
オレは怖いので布団をかぶって寝ようとしたが、足音は少しずつ鮮明になってくる。
ひた、ひた、ひた……
「ひえーーー近づいてくるよ~」
足音がやむと何かゴソゴソと音がする。
大家の友人か、ホームレスとか、誰かいるのかも?
ビビりながらも居候の責任上確認せねば、と意を決して見にいってみる。
足音を立てないよう部屋を出て、物音のする暗闇のほうへ歩いていったとたん、
「ぎやあああああーーー!!」
オレも妖怪も同時に声をあげた。
バタバタと慌ただしい足音が遠ざかり、妖怪は走り去った。
キッチンの電気をつけてみると、床にはカレーパンと黒糖をまぶした薩摩チップスが散乱しているではないか!
妖怪の正体は猫娘だったのだ。
こんな話もある。
城(ぐすく)という地域は城跡である。島の高台にあり、崖の洞穴には風葬で葬られた頭蓋骨や骨が何十体も残っているという。
高台へむかう坂道が与論島で一番の心霊スポットだ。ミチの従姉妹シゲちゃんが子供の頃、暗くなりはじめた坂道を登っていると、日が沈んでいるのに黒い影が枝に着物のようなものをかけている。
しゃがんではまた立ち上がり、つぎつぎと布をかけている。
シゲちゃんが目を凝らして見ると手足がやけに細く、頭に何か突起物が飛び出している。
「ねえ、おばちゃん。なんで夜なのに洗濯物を干してるの?」
月明かりに照られされ銀色の目が光った。
「メエェ~~!」
それは洗濯物を干すヤギだったのだ。
これどうよ?
シゲちゃんは「ほんっとに怖かった!」と話すのだが、怪談なのか笑い話なのか微妙なところである。
ミチのおじいちゃんがまだ青年の頃、「もうあしび」という、若い男女が海岸の洞窟に集まって歌と踊りと酒で過ごす合コンのようなものがあった。合コンでふられた青年は一人寂しく城への坂道をあがって帰路へつく。
ふと顔をあげると目の前には端正な着物を着た美しい女性が立っているではないの。うなじからなだらかな背中をすべり腰へ流れる曲線美が実になまめかしい。サンゴのように白い肌、夕日のような紅の頬、闇夜にうかぶ漆黒の髪、美しい瞳は青年を妖艶な眼差しで誘っていた。
昔の若者は純情でありながら真っ直ぐである。その場で自分の帯をほどき、猿股を宙にほうり投げると、誘惑する女性へわき目もふらず突進した。
夢中で抱きつく……んだが、なんだかカタイ……肌もザラザラする。
それはなめかしい女性のように身をくねらせた松の木だったのだ。
それほど当時の若者は飢えていた、つーか想像力が豊かだったということだ。
前置きが長くなったが、午後1時から沖縄本島の「タイフーンFM」に電話出演した。
沖縄ライブの主催者かよさんが紹介してくれた番組だ。10月16日(金)にはスタジオに入り1時間ほど生出演する。今回は与論だし、電話で15分ほどインタビューに答えた。
曲はパーソナリティーの方が感動したという「ぬちどぅ宝」をかけてもらう。
午後2時50分からは与論中学校での講演会&ミニライブである。
むっちゃフレンドリーで生徒思いの中山教頭が出迎えてくれる。

「校長室へどうぞ」
って、条件反射でこわーい。校長室は職員室へ呼ばれるよりも、ヤバイことをやったときだ。そんな悪ガキが今では校長室で、
「こ、ここに一度座ってみたかったんです」

与論中学校の図書室はなんと全国1の栄誉に輝いた。
見た目は小さくふつうの図書室である。しかし本の選び方からディスプレイまで細かい心配りが光っている。これは司書である斉藤先生が「読書の楽しさを少しでもみんなに伝えたい」という心配りである。
文章を書く作家側からすると、こんなすばらしい図書室が全国に増えてほしい。

おおっ、すっげー!
ギリシャのパルテノン宮殿風の体育館には200人もの生徒たちが集まってきた。みんな体育座りして目を輝かせている。

「与論の子供たちは島から出たことがないので、世界の話を聞かせてください」
講演は旅のおもしろエピソードを織り交ぜながら歌をはさむオペラのような形式にした。
セネガルのワニ男、フィリピンの心霊手術、アマゾンの猿撃ち、アメリカの乞食体験、ジャマイカのかつあげ警官、猫や蛇やサソリやサゴ虫やゴキブリを食った話などなど、いくらでも出てくる。
1、 旅立ちの歌
2、 だいじょうぶマイフレンド
3、 家族

がっはっは、与論の素朴な中学生にはハバネロ級の刺激だったかもしれん。
みんなお目目キラキラだし、歌では手拍子もしてくれるし、すばらしい若者たちだね。オレの講演を聞いてひとりでも多くの子が道を踏みはずすことを願う(笑)。

夜7時からは城(ぐすく)公民館でのライブである。

タイトルは「尊尊我無(とーとぅがなし)」。
これは与論方言の「ありがとう」を意味する。さまざまな国の言葉でありがとうを言ってきたが、与論の「尊尊我無」はもっとも深い言葉かもしれない。
これはすべてのものを敬い、自我を消すという島の哲学である。
公民館の前ではドラム缶でできた炉があり、そこで鍋をつくるという。池田さんや堀やか(「やか」は目上の人の尊称)がアラ鍋をつくりながら電話しまくっている。
リハーサルを聞いて「これはいいからこい」と、急に知人を呼んでくれている。
陽気で元気なおばあちゃんたち、働き者のママさんたち、子供たちやお父さんたち、12日のライブを聞いた人たちから噂がどんどん広がり、なんと100人近い人々がつめかけてくれた。

1、 ユンヌちゅら島(精霊の島)
2、 Hello my mom!
3、 ばあちゃんの手
4、 心がくしゃみをした朝
5、 祝福の歌
6、 サンガイジュウネコラギ
7、 PUZZLE

8、 ぼくの居場所
9、 びっこのおかあちゃん
10、 Life is beautiful(ピアノ)
11、 家族(ピアノ)
12、 なんくるないさ(アンコール)

おばあ軍団のパワーがすごい!

大きな手拍子を打ち、ノリのいい曲ではカチャーシーを踊る。ママさんたちも大いに涙を流し、笑い、大いに盛り上げてくれる。
主催者のミチも驚くくらいすばらしいライブだった。
打ち上げは与論の心づくしだ。

鍋奉行の池田さん、堀やかがアラと大根の鍋、ちえこ姉や城どんや本山姉がアジの南蛮あげやナマシ(ナマス)の和え物、タコの野菜炒め、チャーハンをつくってくれた。とくにナマシの和え物は白身の肉にタマネギとニンニクがきいている絶品だった。
城町のドンである茂やかが三線を弾いて与論民謡を歌う。

与論式宴会と言えば「与論献捧」(けんぽう)である。
宮古島の「おとーり」と同じように、まず親が口上を述べてから自分で杯を飲み干し、空っぽですと示すように頭の上で杯を逆さにする。次の人に杯をまわし、次の人も口上を述べてから飲み干す。
これを全員が酔いつぶれるまでつづけるのだ。なにしろ与論焼酎は25以上あるし、一気飲み状態なので、すぐ腰を抜かす。
あっはっは、こうして人との壁を取り払う彼らは人生の達人である。

与論は小さく貧しい島だが、人類の未来を導く大いなる知恵をもっているとオレは感じた。
「真珠」のようなリゾートとは裏腹につらい歴史をくぐってきた。疫病や飢饉や台風など、きびしい環境で人々が生き延びるには、「助け合い」、「分かち合い」、「他者へのいたわり」、「涙を笑顔に変える力」などの知恵を育んできたのだ。
与論のホスピタリティーは世界でも最高のものだった。
幽霊話さえちょっとユーモラスなのは、いついかなるときも人を笑わせようとする与論人のサービス精神なのかもしれない。
主催者のミチ、4歳の娘わかな、本当にすばらしい出会いを用意してくれてありがとう!

※女性ファッション雑誌「LEE」の11月号に益子陶器市の特集&ライブする見目が載ってます。
オレの出展する「見目陶苑」さんものってますよ。