爆心地とラブホ | New 天の邪鬼日記

New 天の邪鬼日記

小説家、画家、ミュージシャンとして活躍するAKIRAの言葉が、君の人生を変える。

9月18日(木)
080917turu虹の鶴

長崎へいってきましたー。
広島で被爆体験を聞いて以来、ずっと長崎が気になっていたのだ。広島はもう何度もいっているが、長崎ライブはまだない。(長崎に知り合いのいる人、企画してください)
福岡から特急で約2時間(片道3000円)、あこがれの長崎に着く。
おおー、ここもやっぱ路面電車あるじゃん。なんかなつかしい雰囲気がある、いい街だなあ。
「松山町」で路面電車を降り、浦上天主堂へと坂をのぼる。
080917tenshudou

原爆によって黒焦げになったり、首のもげた天使の石像街を見下ろすようにならぶ。原爆で全壊したカテドラルも赤レンガで美しく修復されている。
本堂の右横のドアを入ると、田口ランディさんの本でもとりあげられていた「被爆のマリア」像がある。
080917maria

オレのなかで時間が止まる。
黒く焼けただれた顔にくぼんだ目が慈愛をたたえていた。
その目は無名の彫刻家が彫った石のくぼみにすぎない。しかしダビンチのモナリザよりも強くオレを惹きつけた。
母の目だ。
自分の母親のまなざしと、被爆体験を語ってくれた上田さんのやさしい目が、マリアに重なる。
母の目はすべてを見つめてきた。
長崎という異物たちが交わる港町のにぎわいを、
戦争という人間の愚かしさ、
光の朝、火ぶくれの皮膚を垂れ下げ、もだえ苦しむ人々を、
焼け跡に生き残った命たちが子を育てていく力を、
母たちは見てきたのだ。
誰もいない部屋で、オレのほほを一筋の涙が伝った。
080917mariaup

丘を平和公園にむかってくだっていく。
ここには長崎出身の彫刻家北村西望の平和記念像がある。誰もがこの彫刻は知っているだろう。
空を指す右手は原爆の脅威を、横に伸ばした左手は平和を、閉じた目は犠牲者への冥福を祈っているという。
080917heiwazou噴水に映った平和像

壮大で力強い作品だが、オレには平和記念像の「父性」よりも、被爆のマリアの「母性」に惹かれる。

長崎の原爆資料館は、広島に比べて規模は小さいが興味深いものが多く展示されていた。
爆心地から400メートルの商店街で見つかった6本のビンは高熱で溶けてくっついている。ビンだけじゃなく、手の骨とガラスがくっついたものや、ヘルメットに頭蓋骨がくっついたものまである。
黒焦げの弁当や給水タンク、兵士とはしごの陰が焼け残った壁も印象的だ。
「影」は「記憶」である。
生身の人間がこの世から消えても、記憶は残る。
ならば歌でも、絵画でも、たったひとつの笑顔でも、美しい記憶を残しておこう。
命そのものが「芸術」である限り、オレたちが生きるぶさいくな日常の一瞬一瞬が「作品」だ。
自分たちの命を乗り継いでいく子供たちへ、勇気を与えられるような記憶を残していこう。
080917hahako

原爆落下の中心地には一本の黒い塔が建っている。
1945年8月9日午前11時2分、この塔の上空500メートルで原爆が爆発し、7万人の命を奪った。爆心地の塔を写真に取っていると、バックにオレンジ色の建物がはいる。
おっ、もしかしてあれは!?
ラブホだ!
080917bakusintiラブホ「シーガル」

「爆心地」と「ラブホ」か。
なんという皮肉というか、象徴的な組合わせだろう。
平和運動をやっているPTAは「こんな悲劇のとなりに不謹慎な」とか、「景観を損ねる」とか言い出しそうだが、オレは大手を振ってラブホを応援する。
命を奪う「爆心地」と命を生む「ラブホ」。
ラブホは愛の象徴であり、こうして長崎は7万人の死を乗り越えてきたのである。
原爆の悲劇を語り伝えるのは大切だが、
ラブホで命づくりに励むのはもっと大切なのである。
人類よ、永遠にエッチであれ。
恋することを怖がるな。
オレたちは愛するために生まれてきたんだから。
080917nagasaki

※長崎グルメ情報
とろけるような美味。「岩崎本舗」(西浜町店095-818-7075)の角煮バーガー(336円)。
080917kakuni

長崎ちゃんぽんといえば、1946年創業の「江山楼」(こうざんろう。中華街本店。095-821-3735)」だろう。ポタージュ色の黄色がかったスープが絶品で、特上ちゃんぽん(1575円)には、フカヒレ、ホタテ、エビ、イカ、アサリ、豚など、20種類の具がはいっている。
080917chanpon