神々との遭遇 | New 天の邪鬼日記

New 天の邪鬼日記

小説家、画家、ミュージシャンとして活躍するAKIRAの言葉が、君の人生を変える。

8月18日(月)

オレはクリスチャン・ラッセンの絵が大嫌いだった。
同じようにイルカのペンダントなどをつけているニューエージもアホと思っていた。
なぜ、たんなる1魚類をそこまで祭り上げるのだろう?
たかが「魚」じゃん。
批判ばかりしていてもはじまらない。自分の目で確かめないと気がすまないのが旅人の性分だ。
朝8時半に「父島タクシー」というマリンスポーツ会社に集まり、ツアー(9000円)に出発した。
24人乗りのボートでイルカを探しながら沖へむかう。
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「今日はなかなかいませんねえ」
ベテラン船長とアシスタントのノンちゃん、ヒロちゃんが目を凝らしてさがしつづけている。野生のイルカなので、出会えるかか出会えないか、こればっかりは運まかせなのである。
出航して約2時間、イルカがいないので南島に上陸した。
南島はサンゴ礁がいったん隆起し、沈んだ「沈水カルスト地形」と呼ばれる日本唯一の島だという。
ありえないほど美しい風景だ。
橋形の岩から流れこむ海水が真っ白い砂浜を洗っている。この「扇池」はジブリ映画「紅の豚」のモデルにもなった。
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砂浜には産卵にきた海亀のトラック(足跡)が残り、卵の埋められた場所には3本の枝が立っている。踏まないようにと保護レンジャーが立てた目印だ。
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海亀の性別は温度で決まる。28度以下だとオス、それ以上だとメスになるという。
海にヘッドスターティングできなかった、子亀の死骸があった。
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もう一度海へ出てもイルカが見つからないので、昼食をとることにする。もってきたおにぎりをだし、カップヌードルにお湯をついだ直後だった。
「イルカを発見しました!」
船長がアナウンスする。
全員がメシをほっぽり、あわててフィンとシュノーケルを装着する。ぜびれのフィンが美しい弧を描いて迫ってくる。
080818iruka水中カメラがなくて残念

船の後部から静かに飛びこむと、そこは別世界だった。
とてつもなく美しい青、青、青、
青の世界に住む天使たち。
なんという優雅さ、
自由さ、
そして美しさだろう。
人間と同じ哺乳類の祖先をもち、人は陸へ、イルカは海を選んだ。
人は物質文明と戦争を選び、イルカは共生の知恵を進化させていった。
バンドウイルカは水族館で曲芸もする種で、人間を恐れない。数分ほど人間と戯れてくれたイルカたちは静かに去っていった。
そのあとは昼間での空振りがうそのようにつぎつぎとイルカと遭遇した。イルカと泳ぐのは5回までと決められていて、みんな十分に神秘の時間を堪能した。
カップヌードル・シーフード味、のびのびじゃーん!

つぎはクジラを探しに小笠原の南東10キロ付近にむかう。
ザトウクジラは5月から12月までしか見られないが、マッコウクジラは1年中小笠原の近海にいる。深海にのダイオウイカなどを食べるため、水深1000メートル以上の海域に彼らは住んでいる。
船長は長年のカンと水中マイクの音をたよりに探していく。海が荒れると水中マイクは使えないが、今日は絶好のなぎである。
「ブロウ(潮吹き)が見えました。おおー、18メートルもあるオスのクジラです!」
地元に住むホエールウオッチャーがどよめく。
オスのクジラが見られることはほとんどない。毎日海へ出ているホエールウオッチングツアーのスタッフでさえ、1年に1頭見られるかどうかの奇跡なのである。
クジラを発見しても追ってはならない。むこうがこっちへむかってくるときのみ、水中に潜ることが許されているのだ。
「さあ、どうですかねえ。いっちゃうかなあ。おっと、きました。クジラがこっちへ泳ぎはじめました!」
ベテラン船長さえ驚いている。
漆黒に濡れた巨大岩が近づいてきた。
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潜ったとたん1000メートルを越す深海の深い深い青が網膜から全身に染みてくる。
巨大なクジラがオレの真下を悠々と泳いでいく。
とてつもない畏(おそ)れと敬虔な感情が突き上げてくる。
すべてを内包した沈黙の刹那だ。
この感覚をオレは幾度か経験している。
アマゾンのアヤワスカやメキシコのテオナナカトルやペヨーテなど、シャーマンやネイティブの儀式に参加したときのものだった。

神だ。
オレはまぎれもなく神を目撃しているのだ。

胸のチャクラが至高体験の悦びに震え、脳天のチャクラが光のような恍惚につつまれる。
オレにとってクジラとの遭遇は、ホエールウオッチングというレジャーなどではなく、
「宗教体験」そのものだった。
イルカは天使、
クジラは神、
誕生日の前日、海が贈ってくれた最高のプレゼントだ。
※父島タクシーホームページの日記にオレの見た8月18日のイルカ写真が載ってます。
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これを読んだおまえたちよ、
死ぬ前に日本国最後の楽園、

小笠原にこい!

(と、呪いをかけておく)