仮面ライダー THE FIRSTについて | 北条明の世界

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仮面ライダー THE FIRST

「仮面ライダー THE FIRST」は、2005年に公開された、仮面ライダーシリーズの映画である。

脚本は井上敏樹氏、監督は長石多可男氏である。

劇中で明言されていないが、登場する仮面ライダーは、1号と2号であり、第1作「仮面ライダー」を現代風にアレンジした作品と言える。

ただ、単なるリメイクではなく、石ノ森章太郎氏が第1作当時に執筆した漫画版の要素も取り入れられている。

そのため、ベルトに風圧を受けたり、変身ポーズをとって変身するのではなく、仮面をかぶって「変身」している。

 

この作品は、公開当時は見ていない。

2017年11月6日に、キッズステーションで放映したのを録画し、6月17日に見た。

なので初見である。

たぶんノーカットと思われる。

 

「仮面ライダー」は、細かい部分ではいろいろ粗があると思う。

それを現代の技術で子ども向けでない作風で作り直すというのには、興味を惹かれる。

公開当時見に行かなかったのは、単に自分の子育てが忙しく、また子ども向けでないから、逆に子どもと一緒に見に行けなかったというだけで、いつか見たいと思っていた。

しかし、見たい作品はいくらでもあり、後回しになってレンタルしないまま、12年も経ってしまった。

 

今回初めて見て、お金を出して映画館で見たら、ちょっと残念に感じるレベルというのが、正直な感想である。

出渕裕氏によってリファインされたデザインは、かっこいいし、横山誠アクション監督によるアクションも切れがある(「技の2号、力の1号」という感じのテレビ版と違うアクションには違和感を感じたが)。

ただ、ストーリーが、緑山あすかの取り合いに終始している。

井上敏樹氏が、「戦うトレンディドラマ」と言われた「ジェットマン」のメインライターだった時は、恋愛要素は新鮮だったが、今となっては、恋愛要素はもういいよという感じだし、思いを寄せるまでの描写が丁寧でないため唐突感やご都合主義っぽさを感じてしまう。

それに、今回の映画では、いかにリアルに仮面ライダーとショッカーを描くかというのが、一番見たい要素であり、それが結構いい線を行っている(ショッカーの秘密結社としての描き方や改造人間のリジェクションなど)だけに、恋愛要素は排除すべきだったと思う。

テレビシリーズのように、恋愛に至る経緯を、時間をかけて丁寧に描けない映画では、登場人物たちの思いに感情移入できなかった。

恋愛要素を入れれば、大人向けになるというものではない。

「仮面ライダー」で、藤岡弘、氏の怪我のために描けなかった本郷猛と緑川ルリ子の関係を描きたいというのもわからなくはないが、ちょっと無理があったと思う。

あすがが、ルリ子さんの魅力に及んでいないのも致命的である。

 

そして説得力を感じない設定が多い。

一文字が勝彦と同じ顔だったのは、結局、何の説明もなされず、晴彦と美代子がショッカーになったのは悲劇的でいいんだけど、掘り下げられていないから、どうしてこの二人だったのか、その意味を感じられなかった。

 

井上敏樹氏は、「シャンゼリオン」では独特の世界観を描き切っていたし、「アギト」では緻密に伏線を回収しながら、先に期待を持たせるストーリー作りをしていた。

しかし、「555」以降は、若干行き当たりばったり的な展開が多い気がする。

 

4月から、東映特撮YouTubeOfficialで、「仮面ライダー」の旧1号編を見ていた。

そのせいか、やっぱり、本郷猛は、藤岡氏でないと違和感があるのを感じた。

黄川田将也氏も高野八誠氏も好演なのだが、元のイメージが強すぎる。

そして、前のブログにも書いたが、旧1号編には、何故か画面に惹きつけられるだけのものがあるし、目に見えない力を感じる。

なかなかこれを超えるのは難しいのかもしれない。

 

「仮面ライダー THE FIRST」は、企画意図や作中のイメージなど、こういう「仮面ライダー」が見たかったという思いを満たしてくれる要素が多いだけに、もう少しストーリーが練られていればと感じる作品であった。