映画『二三の事柄』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

業務的売春

 

 

彼女について私が

知っている二、三の事柄


彼女とは近代化が進むパリの事。彼女とはロシア系の専業主婦の事。その売春を淡々と見せながら時代の違和感を語る。あくまでも業務的な姿勢で。資本社会のスピードに背中を押されるのは娼婦だって工員だって同じ。利益の為に奉仕しエントロピーが発生するだけの事。ただ単に人が動き体力を消費する。そこまで達観したかの様なシビアな語り口。ドラマなのに徹底して個人の感情を排してる。北ベトナム、中国、ロシア。当時の世代が敏感になっていた世界時事と横並び。もしかして『メイドインUSA』やら『ベトナムから遠く離れて』やら『中国女』とかと素材を使い回してるのかも。この頃は時代への考察をランダムに撮り貯めて、ほぼポスプロ作業で作品を分けてるかのようだ。現場至上へのアンチテーゼなのだろうか。

 

基本的に私はゴダール信者ではないから共感できた数本以外は、この程度の評価。パラドックスは所詮パラドックス。メディアの乱反射や模倣は肯定しても、その実情を客観する男を手放しで誉める気にはなれない。この作品は確かに鋭い視点があるし挿入される論旨も他の作品と同様に理論武装されてる。ただ、バザンに始まるヌーベルバーグ世代全体の論評にも作品にも、パーフェクトだから何なの?という感情を持ってしまう。なぜなら、それ以前の世代の映画があまりに面白いのでいくら言葉で淘汰しようとも、トリュフォーやゴダールやリヴェットやロメールがクレールやカルネやデュヴィヴィエやクレマンの作品を超えてるとは思えないから。いくら論破されても、表現においてイチイチ正しいとシラケるし、つまらんものはつまらん。