映画『クロック』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

単なる万引き犯

 

 

クロック

 

懐かしのルチオフルチを久しぶりに拝見。本作はタイトルにもある通り時計が逆回転するというギミックで売ろうとしたスプラッターホラー。この映画の中盤あたりから時間が巻き戻り始める訳だが、もし厳密にやるのであればクリストファーノーランの『テネット』みたいに逆再生状態にならないとおかしいが、そこはグロだけを売りにしたC級低予算ホラーだけあって単に死んだはずの人が蘇ったり昨日来た警官がまた来たりするだけで時計が逆回転しても時間が逆回転するような凝った演出は一切ありません。ただグロの帝王のプライドなのか腐敗した遺体がきれいに戻り蘇るというモンタージュ程度は雑だが一応は入っています。そんな甘々な内容だが、これが意外に見ていて気持ち良かった。なぜなら最終的にクズ野郎にはちゃんと天罰が下っているから。その意味ではフルチにしては娯楽映画の脚本としてマシな方です。まあ80年代ホラーブームって奴はハリウッドでもマカロニでも単純明快シンプルに楽しめる作品が多かっただけに思わず子供時代に見た黄金期のジョンカーペンター作品群を思い出して懐かしい気分になれました。

 

この物語は人里離れた山奥に佇む豪邸に住む老夫婦と彼らの資産を狙うティーンの話です。ただこの老夫婦はとんだサイコパス野郎どもで弟夫婦を殺し雇われていたメイドも手にかける所から話が始まります。その一方で不良少年たちは強盗目的で山奥の豪邸へと向かう。いかにも80年代的なカッコ良いスコアが流れて凶悪犯的な雰囲気を醸し出すが、この少年たちは道すがら商店を襲うと思いきやコソコソと万引き。その間、店主は女子の下着をクンカクンカしていて気付かない。このダサさこそが正にフルチ節です。なんつっても監督本人の最後も糖尿病の薬を吞み忘れて永眠ですから。この間抜けさがそのまま作品に出てる感じです。そんな訳で子悪党の少年たちは豪邸に押し入るが誤って老夫婦と庭師を皆殺しにしてしまう。その上、番犬に阻まれて立ち往生。朝になるのを待っていると時計が逆回転し老夫婦と庭師が蘇り少年たちを殺しに来る。だが時計が巻き戻り続けた事で老夫婦が殺した連中も蘇り始める。やたらと最近の日本じゃタイムリープ系が流行ってる訳だが、この手の時間のギミックが付いてる作品はどれも楽しくて嫌いじゃない。フルチにしてはグロシーンがほとんどない作品だが、それを目的に見ない限りにおいては楽しめます。