『ルート1』の感想from映画生活 | アキラの映画感想日記

アキラの映画感想日記

映画を通した社会批判

2005-08-12の投稿

ルート1/USA

 

 

これはドキュメント

 

初めてこの作品を知ったのはクレイマー氏が亡くなった時だった。

運悪く度重なって上映会に行き損ね、先日ようやく初対面を果す。

長い間に期待が膨らみ過ぎたせいかこの程度かという印象だった。

ヨーロッパからアメリカに帰った監督が友人と共に東海岸沿いの

ルート1を辿ってカメラを回しながら南に向かうロードムーヴィー。

なるほど、確かに登場する様々な問題に対し表面的な解説はなく

訪ねる土地ごとにそこに住む人々の生の声をガッツリ拾っている。

過疎化、伝統産業衰退、人種問題、エイズ、麻薬って括りはない。

佐藤真作品の様に、そこにいる人間自体が真っ先に浮かび上がる。

 

クレイマーの友人でアフリカ帰りの医者という設定のドクが実は

虚構の人物というだけで、この作品のジャンルがドキュメントと

決めかねるという人もいるが、ある設定のもとで役者がマイクを

持たされる手法は、立派に確立されたドキュメントの方法論です。

リュミエール兄弟の『工場の出口』は、世界で最初に撮影された

映画として知られるが、我々の目に触れていたあのバージョンは

実は1stテイクではなく映りの良いテイクを選んで世に出している。

これがドキュメント映画の始まりです。仕掛けなしで撮れる映画

なんて初めから存在しない。フィルム記録でヤラセなしなんて事

ほざいてたら現像代だけでも破産です。企画段階での取材内容を

繰り返してもらったり演じてもらったりと、ケースバイケースで

様々な虚構がドキュメントの方法論として充分容認されています。

伝えるべきは事実より真実って理屈は劇映画だけの論理ではない。

アメリカ診断とも解釈できるこの作品の仕掛けは当然の作意です。