映画『変形寄生:起源』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

アグレッシヴな頭脳バグ

 

 

変形寄生:起源

 

宇宙から巨大昆虫が攻めて来る話といえばバーホーベンの『スターシップトゥルーパーズ』が強烈に記憶に残ってる訳だが、あのラストシーンで敵の頭脳バグを捕えて諜報部がテレパシーで心を読むと「こいつは恐れてるぞ!」と歓喜する訳だが、それに比べ本作の頭脳バグはそんなヘタレじゃないどころか先陣切って地球に攻め込んで来ます。そんな侵略者と何年も戦い続けている未来世界って設定。本作の頭脳バグは人間の脳味噌ごと情報を吸い出したりはしないが捕えた人間に寄生してスパイとして操る能力を持っています。それどころか人間を改造して、より高性能な虫と人類のハイブリットを作ろうとしてる。まるで"ハンター×ハンター"のキメラアントです。それに対し不利な状況に追い込まれた人類の軍人たちは神風特攻してでも一匹でも多く駆除しようと決死で戦い続ける。ただ今作の肝はやはり頭脳バグに寄生された恋人たちのドラマだろう。この寄生で人間は完全に脳死する訳ではない。ふと我に返り自分の意識を取り戻す事もあるのだ。だからこそスパイとして使い勝手が良い。ごく普通の救護対象者として基地に入ると意識が虫側にスイッチされて中から扉を開け虫軍団を招き入れてしまうのだから。

 

ここ最近、中国映画界はやたらとSF大作を連発してる訳だが、どれもが素晴らしいって訳じゃない。この作品も派手に作り込んではいるが品質自体は微妙です。CGのクオリティ自体も初期のギャレスエドワース並に合成がイマイチだし何よりも中華系とは思えない程にアクションに魅力がない。カット割りに抑揚がなくて見せ所をことごとく外しちゃってる感じ。とにかく大規模な戦闘を展開してれば、それだけで客が満足するとでも思っているのだろうか。この点が商業第一線でも一流と三流を分ける所です。センシティヴな演出が上手ければ上手い程にダイナミックさも際立つのです。「これさえすれば客は喜ぶんだろ」って安易さが最も駄作を生む。だからロボットバトル系ジャパニメーションも9割以上がゴミなのです。「これさえやれば男子は喜ぶ」と売れるジャンルは工夫のない内容を平気で量産し続ける。SFアクションってのも正に最も売れるジャンルだからこそ駄作が多い。なんつっても本作はラスボスすら全く大物の風格がなくてマウントとって喜ぶネトウヨ的なチンピラ感全開。後半は特に下手糞なショットや繋ぎも多くて好意的に受け取る気も失せました。