映画『OUT』の感想 | アキラの映画感想日記

アキラの映画感想日記

映画を通した社会批判

バカだがクズじゃねえ

 

 

OUT

 

ヤンキー映画撮らせるなら品川ヒロシでしょ。『ドロップ』にしてもタンカの切り方のセンスがパナい。ゾッキーメンバーのキャラ付けが、かなり『東リベ』シリーズに似てるけど、その印象付け方が上手いので個々のキャラの魅力がちゃんと伝わります。ストーリーの大筋は降旗×健さんが80年代によく撮ってたヤクザの足抜けみたいな話をヤンキーに置き換えてる感じ。この主人公はヤンチャし過ぎてネンショーにブチ込まれ保護観察中の身。更生の為に焼き肉屋に預けられて板前修業中。喧嘩っ早いのを必死で我慢しているが類は友を呼ぶで地元を仕切るゾッキー幹部連中に慕われるようになる。だが彼らの縄張りを狙う半グレ集団が地元ゾッキーに総攻撃をかけて主人公も抗争に巻き込まれ大暴れってな内容。殺陣にもそれなりに笑える工夫があって見ていて楽しい。ただ総長が超つえー設定の割に蹴りがどれも重さや破壊力を全く感じない。もう少しSEだけでも大げさにして欲しいものです。

 

タイトルは勿論アウトローを意味していて反社的な連中の仁義を描いてる訳だが残念ながらなんちゃって感は強い。ゾッキー連中は仲間を何よりも大切にするのに対して悪役の半グレ集団は部下をコマとしてしか扱わないって所で分かり易く価値観の対比がある訳だが、あまりにテンプレ過ぎる設定にアクション要素とお笑い要素だけを咥えて美味しく仕上げましたって感じ。この手の作品の構造は深作作品に例えるなら実録ヤクザ系に移行する前の任侠ヤクザ系後期によくあった任侠ヤクザ対ビジネスヤクザの対比です。ただ任侠側たる地元ゾッキーにも根を感じられません。つまり堅気側すらも曖昧な価値観の中に生きる存在に感じるのでおままごと状態になってしまっているのです。ここ最近、先人の主張を理解しないまま、やってる感で説教たれる中身のない老害が増えている訳だが、それと同じで理解の浅い記号としての仲間意識になり過ぎてる印象があります。エンタメとして楽しいのは結構だが、いわゆるタイトルに法外の美学を掲げながらここまで薄い記号でしか価値観を示せないと観客からは今以上に法外の美徳への理解が失われるだろう。とにかく日本人は忘れ易いし鬼畜米に面従腹背する戦中世代を見て完全従属だと勘違いする程に物事を表層でしか見ていないから、あまり記号的に重要な価値観を提示する事には大衆の勘違いを誘発する懸念を多少ながら感じます。