映画『アムリタの饗宴』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

VR酔いっぽい効果

 

 

アムリタの饗宴

 

都市伝説っぽい所からグロ異世界にタイムループ系へと展開する坂本サクのホラーアニメ第二弾。前作『アラーニェの虫籠』も昆虫系描写で嫌悪感を覚えさせるキモ描写のオンパレードだった訳だが今回も色々と気持ち悪くさせてくれます。ここ最近は3Dからセル風の書き出しが簡易的にできるゲームエンジンも増えてセル風の絵で3D風のカメラワークを付け易くなってる訳だが、この作品では、やたらと臨場感を狙ったカメラブレを入れつつも人物の動き自体はセル風に見えるようにコマ抜きをしてるものだから見ていて酔ってしまいます。まるで微妙に反応速度が遅いVRコンテンツを体験してるかのような気持ち悪さ。クリーチャーのグロさよりも、そのアニメーション加工の方で気持ち悪くなりました。ストーリーの方は、とあるJK三人組が奇妙な団地の廃墟に閉じ込められ謎の虫の化け物に次から次へと殺されてゆくってな内容。殺されたJKは虫に憑依されて他のJKを襲う。ただ団地の中は時間が繰り返しているので友人が助かる可能性を探って何度もやり直す。この辺も最近流行の異世界とタイムリープって感じで他のジャパニメーション同様に未来がない時代性の反映を感じさせます。

 

それにしても昨今のジャパニメーションの風潮は一世紀前のドイツ表現主義を思わせます。それこそ誰もが『カリガリ博士』の"眠り男"になってしまっている。そして現実を無視しヘイトポルノを妄信して「プーチンけしからーん」と吹き上がる似非白人レイシストの戦後ジャップは正にユダヤ人を虐殺したゲシュタポと同じ醜悪さがあります。それがアニメという表現にも不安症状として露骨に現れる。まあ表出してるだけ映画界の一部のマトモな作家やアニメ業界はマシな訳だが、マスメディアはそれらの問題を徹底的に覆い隠しています。この現状に気持ち悪さを感じるのが正常な反応。今作の後半では誤って快速電車に乗ってしまった3人の回想が象徴的に挟み込まれる訳だが、どんなグロいシーンより、そのシーンが辛かった。この世代の若者たちは直感的に先がない事を悟ってるような物言いなのだ。この電車は止まらない。そのまま社会は終わる。せめて現実逃避の中でささやかな享楽を。これが近年の若者たちから最も感じるマインドです。この主人公は繰り返す事で少しづつ良くしようとするが、その前提となる公共性すら無能老害どもに奪い取られたのが今の若い世代なのです。