映画『バレリーナ』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

デリンジャーは膣に隠せ
 

 

バレリーナ


バレーをやってる親友を殺したポン引きヤクザを探し出し追い詰めるノワール復讐劇。韓国映画のヴァイオレンスはグロい描写が多いのでホラー扱いされがちだが本作はむしろ復讐心の後ろにある主人公の孤独が痛いほどにぶっ刺さる人間ドラマ要素が強い。この主人公は海外でVIP警護の仕事をしていたと自称するが正確にはモグリの殺し屋とでもいった所だろうか。とにかく冒頭でコンビニ強盗をぶちのめすシーンから何処か投げやりで深い闇を感じさせる。ところがケーキ屋で偶然子供時代のクラスメートに再会した所から少しづつ表情が豊かになる。ある種の百合的な感情が生まれたのかもしれない。それ以前にひとりきりで生きて来た人間がやっと見つけた気の許せる親友。彼女の遺言で殺人犯を探しその裏にいる組織ごとぶっ潰すド派手なレディースアクションが展開する訳だが、そこに所々で回想が挟み込まれる度に殺された親友への想いの強さに胸が締め付けられます。まるで最愛の恋人と過ごしたような日々。心が許せる相手を得てさぞかし幸せだったのだろう。だからこそ彼女を殺した変態強姦魔は絶対に許さない。

 

この主人公は犯人を殺すために仲間に紹介された老人たちから大量の武器を買う訳だが、このシーンが律義にも彼女が使う武器の伏線になっているって所が分かり易くて良い。ド派手な火炎放射器も残酷でなかなか良いが個人的にはデリンジャーの使い所がなかなか良い感じでした。リンカーンも暗殺したこの銃は至近距離でも弾丸が貫通できない程に威力は弱いが作られた時代からしたら画期的な小ささなので隠し持つには都合良い。よく女殺し屋が活躍するノワール映画を見ていると昔からデリンジャーを膣に隠して娼婦のふりをして潜入してターゲットを仕留めるなんて話がある。それだけにピンチの時の奥の手として登場します。シュワちゃんが80年代に大暴れしたレスターの『コマンドー』では次から次に武器を持ち換えて大量の敵を殺しまくる訳だが今作のアクションにもそれに近い爽快感があります。もはや弾切れと思いきや次の銃が出て来る感じ。なかなか周到に準備した討ち入りです。それが爽快に感じるのも、やはり彼女がいかに親友を大切に想っていたかが分るから。この孤独を脱するような激しい感情は愛にしか見えません。それだけに本作は私的には極めてプラトニックかつストイックで一途な女同士の恋心を描いた百合映画に思えてならないのです。