映画『君は彼方』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

さよならキーちゃん

君は彼方

 

車に轢かれて意識不明になり冥界から現世に戻ろうと七転八倒する少女と彼女を引き戻そうとする霊能力ある家系の少年の物語。臨死体験を通してティーンの等身大の苦悩を描くという私が大好きなジャンルな訳だが、この品質にはガッカリさせられました。まずホンが十代の頃には誰にでもあったような恋愛感情を描いているにも関わらずチープな歌謡曲の歌詞を並べたかのように実感が籠らないペラペラな台詞だらけ。それに倣うように悪い意味で無難な演出がされているのに、キャスティングが演技派の役者で脇を固め初心者と監督自身と土屋アンナを中心にアーティキュレーション全開のエッジの効いた芝居をしているので絵と芝居の乖離がひどい。こんな風に個性派の芝居をさせるなら絵的にも湯川の『マインドゲーム』並に奇抜にしないと釣り合いません。

 

ヴィジュアル的にはアニメのモーション作り自体は及第点だが描き込み自体に映画レベルの丁寧さがなく何よりもコンポジットが酷い。つまりフィニッシングのやっつけ仕事感が全体の印象を致命的に悪化させています。とにかく霊体エフェクトに不定形感がなかったり水面のキラメキエフェクトのパースが緩過ぎたり今日日CRの仕事でもこれはないだろってな仕上げ。どんだけポスプロに時間足りなかったんだって感じ。とりあえず新海誠であったり石立太一であったり櫻木優平であったり中村亮介であったりパヤオであったり流行りの絵作りを表面的に模倣しようと色をいじってるが、あまりにも大雑把過ぎ。ホン作りにしても絵作りにしても、もっとオタクになって深堀りして工夫しないと模倣は劣化コピーにしかなりません。ちなみにキーちゃんの伏線は「実は琥珀川でした」ってよりは納得できます。