映画『アナ』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

厳しいKGB

ANNA/アナ

 

リュックベッソン自身によるロシア版『ニキータ』って所だろうか。あの頃の作品を思わせる勢いのある内容ではありました。この物語の舞台は冷戦時代。KGBとCIAの熾烈な諜報戦の中で組織からの離脱を求めて戦った二重スパイの物語。派手に暴れまわるだけでなく狡猾に駆け引きのカードを潜ませる頭脳戦としてもなかなか楽しめる構成。表向きはフランスでモデルとして働きながらレズビアンの恋人と暮らし、その一方で米露の諜報局を手玉に取る。この心理戦を恋愛の二股みたいに描くって所がベッソンならではの幼稚な所。逆にだからこそ大衆ウケする訳だが。この二重スパイ状態をマトリョーシカに例える台詞回しはなかなか見事。諜報局の試験には思わず外務省のラスプーチンこと佐藤優の体験談を思い出してしまった。アクシデントの際、自ら対処できない者は失格なのです。そんな非情な世界に生きるヒロインの開放への渇望。

 

基本的に諜報員って職業は国家機密を扱う訳だから引退する時は殺される時。特に当時は今みたいに緩くないからスノーデンのような売国は御法度。厳しい諜報の世界で苦悩しながら、いかにして彼女は開放を勝ち取るのか。そのトリックもなかなか鮮やかなもの。もう理想の女性像を追い求め続けて若い頃に予定してた倍以上の作品をダラダラと撮り続けたベッソンだが今回は得意分野で真っ向勝負って感じでスリリングな展開を楽しませて頂きました。やっぱ始末人だとか暗殺者だとかノワール系の要素が入ってこそベッソン映画は魅力を発します。ビジュアル的にも『ジャンヌダルグ』を思わせる象徴的な横顔とか『アンジェラ』を思わせるエッフェル塔のシルエットとか分かり易いオシャレ感が出ていて印象に残ります。