映画『くちづけ』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

くちづけ

 

 

障害者同士

 

ヤバいほど号泣。たっぷりジュースを飲んだのにトイレに行きたくならないほど目と鼻から水分を放出してしまった。感動した訳ではなく単に泣かされた。あからさまに泣かせを狙った演出にまんまと乗せられてしまった訳です。その方が気持ち良いから。冷めさせるポイントや非リアルはとりあえず無視して泣いておきました。脚本として親子の絆をしつこく押し過ぎる無駄とか、あまり実感を持って描かれない世話の大変さとか。そこを追求し始めると楽しめないだろうから。でも障害者による暴力や犯罪の面をもっと押した方が鋭くなった気がする。キレて殴りかかったり痴漢したりという所もあったけど、その要素こそが大変さに実感を持たせるから。

 

元が舞台といえば黒木監督が撮った『父と暮らせば』のように舞台的な脚本の良さを活かすために演出があまり映画的ではなくなる事もある訳だが、この作品も正にそう。映像的に堤作品らしいポイントがほとんどない。あからさまに舞台的なのは芝居も同じ。一辺倒に声を張る芝居ばかりが続く。ここまで台本に依存されると、この作品における堤監督の存在意義を問いたくなる。コミカルな演出は確かに堤監督の得意技な訳だが、その笑いにすら独特のバカバカしさがない。極めて真面目に台本を映像化しています。

 

思うに竹中直人演じる"愛情いっぽん"なる人物は真に受け易い人なのだろう。マコちゃんに云われるままに無××中したり、うーやんに娘を託そうとしたり。これは子供がふざけて云った事を本気にしてしまうようなもの。美化されているから現実的に障害者同士の結婚は難しいという事が充分に実感できるように描かれていない訳だが、それ以前に、どこまで本人たちが本気で云っているかも知る由がないのだ。少なくとも実際に知的障害者と関わると、そう感じる。ただ子供と同じで無意味な言葉を遊ばせるのが楽しいだけ。