映画『ナックルガール』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

ナックルガール

 

 

オーナーとしては好都合なはずだが

日本を舞台にした韓国の大ヒットマンガの映画版。一応は現代を舞台にしているが典型的なお姫様救出系のお話になっています。それもかなり強引。裏で非合法格闘ギャンブルで儲ける大企業の幹部が珍しい血液型である主人公の妹を拉致してメイン口座の血液認証に利用しようとする。そんで失踪した妹を探してプロボクサーである姉が妹を取り戻す条件として格闘ギャンブルの選手"ナックルガール"になるってな内容。正に悪い意味でいかにもマンガと云える無理な設定とご都合主義のオンパレード。やはり日本の悪しきマンガ文化の影響だろうか。ノワール系でも一般的な韓国映画は日本映画と違って設定に説得力があってリアルな作品が多い訳だが、これは日本の商業映画並のナンチャッテ感にゲンナリさせられます。それこそ実際の社会背景に直結するフィクションって奴が苦手な日本マンガ文化のパターナリズムなんて真似ない方が面白い作品が作れるだろうに。とにかく日本のメジャーな大手出版は告訴を面倒臭がって下手に炎上するようなネタは避けるし頭の悪い子供が好むバトル展開を描かせようとする。ジャンプとか。だから下手にリアル系のシリアスマンガは中途半端でダサく感じられるのです。

 

そもそも珍しい血液型を使わなくても口座を乗っ取る方法はいくらでもあるだろうに。それに主人公を格闘場に引っ張り出さなくても刑事にやったように暗殺しちゃえば問題ないでしょうに。まあ殺人格闘技自体の人気が落ちて掛け金の総額が減ってるから新しい趣向のドラマを仕込むって意味では都合良いかもしれないが、ならば彼女が勝つ事はオーナーである悪役にとって好都合なはず。それこそ新しいヒーローの誕生でもう一儲けできます。わざわざドラマチックに仕込んでおいて自ら打ち壊す必要はありません。そんな訳で悪役側の行動が最初から最後まで主人公のバトルを盛り上げる為のご都合主義にしか見えませんでした。まあ日本のコミック文化自体は裾野が広くマイナーな所で傑作を描く作家も多いので真似るなら商業的しがらみで腐ってるメジャー系よりもマイナー系にした方が良い。メジャー系のパターナリズムばかり真似ていると韓国文化も日本文化と同様に腐ってしまいます。ただ困った事に過剰に民主的な商業主義で裾野が細る現象はアジアのみならず世界中で起きている事なので、なるべく文化の権威主義って奴を大切にして欲しい所。昨今の日本じゃ特にお手本にしてた非商業分野から潰れてるだけに切実です。