映画『SPIRITS OF THE AIR』の感想 | アキラの映画感想日記

アキラの映画感想日記

映画を通した社会批判

スピリッツ・オブ・ジ・エア

 

 

シンボリックな壁

 

エジプト出身監督といえばカナダで名を上げたアルメニア系のエゴヤンも有名だがオーストラリアの広告業界から伸し上がったプロヤスもハリウッドで『クロウ』とか『アイ、ロボット』とかそれなりに大作を撮ってる。これは彼がオーストラリア時代に残した唯一の長編映画。ちなみにジェーンカンピオンの短編『彼女の時間割』の印象的な音楽を作曲したのもプロヤス監督。砂漠の情景は同じオーストラリアの古い低予算SF映画『レザーバック』を思い出させるが、こちらはもっと控えめで象徴的な表現。

 

舞台は砂漠のど真ん中に建つ一軒家。その北には断崖絶壁の巨大な壁が立ちはだかる。その家に暮らす兄は壁を越える為に飛行機を作り、妹はその家で親の墓を守り続ける。そこへ南から来た男が転がり込んで物語は始まる。詳しくは語らないが男は何者かに追われ北へ向かって逃げている。彼の存在は兄弟の関係を悪化させ確執を表面化させる。特に進展はない話だが、だからこそその世界が人の内面を象徴して見える。まるでカフカの"城"。逃れようがない不安が表れている。

 

それにしても今後ファンタスティック映画祭はどうなっちゃうんだろ。夕張市自体ももうヤバいし今年は東京が休映になったし、時期的にも東京国際映画祭とフィルメックスに挟まれてキツい処。毎回奇抜なラインナップで度肝を抜いてくれるこの映画祭にはどうにかして存続して欲しい。ただスケジュールがキツい。平日のオールナイトばかりじゃなく休日の昼間に上映してくれたら足を運んだであろう作品もいっぱいあるのに。こーゆーオセアニア系の変な作品ってそーゆー機会じゃないとなかなか出会う機会がない。