映画『殿利息でござる』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

殿、利息でござる!

 

 

 

公共に奉仕せよ

 

「偉いのは貴方じゃない!ほんの少しでも濁ったものを清らかにしようとしてる人たちだ」自らの資産を擲って郷土の未来を守ろうとする宿場町の人々。我々日本人の本来あるべき姿を思い出させようとするかのような時代劇。今だけ、金だけ、自分だけの浅ましい資本家があまりに増え過ぎた現代に突き付けるような題材。中村監督が最近撮った時代劇を2本連続で拝見した訳だが、こっちの方が圧倒的に面白く共感できた。コーランでも儒教でも罪とされる不労所得。金融屋や既得権益は人の道に反する。(社会保障や年金や生活保護は機会均等や基本的人権という社会基盤を守るシステムだから別)だが理不尽を是正する手段として止むを得ない場合もある。この物語は理不尽な搾取で破産し夜逃げする者が相次ぎ潰れかけてる宿場町を救う為に御上に金を貸し付けて利息を払わせる事で理不尽な搾取分を賄おうとする物語。発案者はダメ元で活動を始めた手前、引っ込みがつかなくなり仲間を諦めさせるためにお偉方に相談するが意外にも誰もが共感し協力を申し出る。このやり取りがいかにも最近の中村作品らしい良い意味でのヘタレ感が出てて面白い。いやはや渡る世間に鬼はなし。どんなに守銭奴に見える商人も理不尽に見える役人も未来を守るべく味方する。どうか現代の資本家にもそうあって欲しい。グローバリズムの競争に煽られ私利私欲の為に日本を売り渡し郷土を売り渡してまで私腹を肥やし実体経済の生産性と可能性を潰し子供たちに未来を残してやれないような鬼畜に甘んじるのか。そんな競争はキャピタリズムですらない。

 

ここ数年、私が在中で依頼を受ける制作プロダクションの多くがホワイト化してコンスタントに時間が作れるようになったので毎週末にはワープア状態に陥ってる同世代の友人たちにメシをおごっている。いつも菓子パンやカップ麺ばかりじゃ栄養バランス崩れるだろって事で。そんな彼女たちから聞こえて来るのは仕事中に後ろから乳揉まれたとか肉体関係を迫る脅迫メールがしつこいとかブラックな労働環境の愚痴や現政権批判。(私の発言がポリティックに偏るのは彼女たちの影響かもしれない)そんな時は日弁連に繋げたり親の知人から労訴専門の弁護士を紹介したり。ブラック経営者なんて片っ端からスラップで破産させ首吊る所まで追い込んでやりたい所だが、あくまで告発は任意。意外とセクハラ社長との関係がまんざらでもない女性もいるし。そんな女性たちの中には忙しい合間を縫って貧困から充分に学習機会を得られない子供たちを対象にした日曜学級のボランティアに参加してる者もいる。そんな福祉活動に対し教育機関側は助力として利用しながら何の代償も払わない。ブラックボランティアのような遣り甲斐搾取。本来なら児童の教育格差や貧困層の栄養状態って我々のような時間も資金力も限られたプロレタリア層ではなく株主配当等の不労所得を貪っているブルジョワ層が気に掛けるべき所であるはずなのに。これらの日本の未来を食い物にする搾取の実態を口にすれば連中は盗人猛々しい言論弾圧で潰しにかかる。これが文明社会の権力者の作法だろうか?むしろ封建的時代であるあずのこの作品内での日本人の方がよっぽど文明的で合理的な作法がある。それは地元を救う為に立ち上がった商人たちだけではなく松田龍平演じる気難しい勘定方の御上への忠義心まで当然あるべき大義なのだ。それが失われてしまえば良心は強欲に食い潰され日本の秩序自体が崩壊するだろう。

 

You may be a state trooper, you might be a young Turk

You may be the head of some big TV network

You may be rich or poor, you may be blind or lame

You may be living in another country under another name

Well, it may be the devil or it may be the Lord

But you''re gonna have to serve somebody

 

by Bob Dylan