映画『寄生体X』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

寄生体X

 

 

結局バットかよ

 

かつてカイエデュシネマを創刊したバザンをはじめとする米国かぶれの批評家連中がフランス映画界にハリウッド的合理主義を持ち込むべく自ら製作に乗り出したのがヌーベルバーグと呼ばれる素人参入だった訳だが、この手のフランス映画界でハリウッドに憧れる連中は今でもそれなりにいるらしく最近じゃ80年代SFホラーブームを再現したがる映画人もいるようだ。この作品も彗星接近に伴い町の人々がゾンビ化してしまうという、いかにも我々の幼少期に流行ったオカルトを思わせる内容。主人公の部屋に『ニューヨーク1997』のポスターが張ってあったりして露骨にジョンカーペンター愛を感じてしまいます。そいうえばカーペンター自身も代表作『ハロウィン』の中で露骨に後に自らリメイクする事になるハワードホークスの『遊星よりの物体X』を流してたっけ。だから邦題もこんな感じなのか。とにかくこの手のB級SFホラーのお約束がてんこ盛り。

 

パソコンオタクの主人公が惚れた女を守るべくゾンビをバットでブチ殺しまくるってなゲーム脳的展開。謎の宇宙生命体は下水に潜んで触手を伸ばして人間に寄生する。この低予算ならではの安っぽい見せ方をちゃんと特撮テイストで再現しています。エロアニメとかでは定番化している触手プレイも思い出してみれば最初に見かけたのはサムライミの『死霊のいけにえ』だった。そんな訳で私からすれば幼少時代に親しんだ80年代オカルトの懐かしい表現のオンパレード。『キャットピープル』や『猛獣大脱走』等を思わせる闇の使い方やユズナやロメロを思わせるグロテスク描写。思わず30年前の幼少時代にタイムスリップしたかのような感覚に陥ります。ただ当時の作品と比べても演出テンポがイマイチ鈍かったりして娯楽映画としてお世辞にも上手いとは云えません。ただただ80年代ハリウッドSFホラーブームへのノスタルジーだけを詰め込んだって感じの内容です。